世界のデーツ生産動向:中東・北アフリカ主導の供給と成長戦略

果物(南国)
生産量



2023年のデーツ生産量は世界全体で9.661Mt、前年比+3.84%。エジプトやサウジアラビアが上位を占め、パキスタンは前年比+120%と急伸。気候変動と水不足が課題となる一方、今後は需要拡大が見込まれる。

生産量のデータとグラフ

デーツ生産量の最大と最新

世界 エジプト サウジアラビア アルジェリア イラン イラク パキスタン スーダン
最新 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年
最大期 2021年 2023年 2023年 2023年 2018年 2000年 2021年 2020年
最新値[Mt] 9.661 1.867 1.643 1.325 1.024 0.6359 0.5038 0.4427
最大値[Mt] 9.845 1.867 1.643 1.325 1.357 0.932 0.8383 0.4653
前年比[%] 3.837 1.052 2.003 6.453 -0.6156 -10.55 120.4 -0.01093
全体比[%] 100 19.33 17.01 13.71 10.6 6.583 5.215 4.582

 

これまでの推移

デーツの生産量
最新の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

デーツ生産量についての推移と展望

デーツ(ナツメヤシ)は古代から中東・北アフリカで栽培されてきた果実であり、現在も乾燥地帯の重要な作物です。2023年の世界総生産量は9.661Mt(メガトン)で、前年比+3.837%と成長を続けています。高温・乾燥に適応する性質に加え、栄養価の高さやイスラム文化圏での宗教的・伝統的需要が生産拡大の背景にあります。

エジプト―生産量世界一のデーツ大国

エジプトは2023年に1.867Mtを生産し、世界シェアの19.33%を占めます。前年比では+1.052%の安定成長を記録しました。ナイル川流域の灌漑農業によって支えられた生産体制が確立されており、国内消費だけでなくアラブ諸国や欧州への輸出も行われています。近年では加工品や有機栽培などの高付加価値品目への展開が進んでおり、外貨獲得源としての重要性も増しています。

サウジアラビア―宗教的需要と品質志向の強化

サウジアラビアは1.643Mt(17.01%)の生産で世界第2位に位置します。前年比+2.003%と堅調な増加が見られ、メディナ産やアジュワ種など高級デーツのブランド化に注力しています。特にラマダン期間中の需要や巡礼者向け供給が増加しており、輸出面ではマレーシア、インドネシア、トルコなどイスラム人口の多い国々が主な市場です。

アルジェリア―着実に存在感を増す北アフリカの台頭

アルジェリアは1.325Mt(13.71%)の生産で前年比+6.453%と大幅に成長。サハラ以南の砂漠地帯を活用したオアシス農業が展開されており、今後も耕作面積と収量の増加が見込まれます。特にデグレット・ノール種は風味と食感の良さから高評価を得ており、欧州市場への進出が活発です。内戦や社会不安が収束したことで農業投資も復活しつつあります。

イランとイラク―伝統国の明暗

イラン(1.024Mt、前年比-0.6156%)とイラク(0.6359Mt、前年比-10.55%)は、古くからデーツ生産の中心地でしたが、近年は様々な課題に直面しています。イランでは水資源の不足や制裁による輸出制限が成長の障壁となっており、イラクは政情不安とインフラの未整備が大きく影響しています。両国とも伝統品種の維持と近代化のギャップに苦しんでいます。

パキスタン―急成長を遂げるアジアの注目株

2023年におけるパキスタンの生産量は0.5038Mtで、前年比+120.4%という驚異的な伸びを示しました。これには降水量の好影響や作付面積の拡大、また市場価格の上昇による生産者のインセンティブ増加が影響しています。今後はインドや中東への輸出拡大と、ポストハーベスト技術の強化が持続的成長の鍵となるでしょう。

スーダン―気候対応が求められる不安定な生産国

スーダンは0.4427Mtを生産し、世界シェアの4.582%を占めていますが、前年比では-0.01093%と横ばいです。内戦や気候変動、灌漑施設の老朽化などがボトルネックとなっており、政治的安定と技術支援の導入が不可欠です。周辺国への輸出ポテンシャルは高く、国際支援があれば大きく飛躍する可能性があります。

世界の課題と今後の展望

世界のデーツ生産は、人口増加と宗教行事による需要増を背景に今後も緩やかな成長が見込まれます。一方で、気候変動、水資源の制約、収穫後ロス(ポストハーベストロス)といった課題も深刻化しており、特に乾燥地農業における持続可能な灌漑技術や品種改良の重要性が増しています。また、消費地の多様化と健康志向による「デーツのスーパーフード化」が進むことで、今後はヨーロッパ、アメリカ、アジア市場における加工食品としての利用が拡大する可能性も高いです。

 

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