2023年のシード生産量は前年比で約19%減と大幅な減少。最大の生産国カナダが約30%減少した影響が大きい。タイやアルゼンチンでは安定も見られ、耐病性・干ばつ耐性など高機能種子の需要は今後さらに高まると予想される。自給型種子体制の整備も進展中。
シードの生産量ランキング
各国 | 最新値[kt] | 全体比[%] | 前年比[%] | |
---|---|---|---|---|
世界 | 198.9 | 100 | -19.19 | |
1 | カナダ | 112.2 | 56.42 | -29.56 |
2 | タイ | 36.99 | 18.6 | -0.132 |
3 | アルゼンチン | 36.67 | 18.43 | +1.526 |
4 | オーストラリア | 4.923 | 2.475 | -0.14 |
5 | トルコ | 4.192 | 2.108 | -13.53 |
6 | ウルグアイ | 3.815 | 1.918 | +0.324 |
7 | モロッコ | 0.0939 | 0.0472 | +0.321 |
8 | メキシコ | 0.00293 | 0.00147 | -10.67 |


詳細なデータとグラフ
シードの現状と今後
2023年の世界全体のシード生産量は198.9千トン(kt)で、前年から約19.19%の大幅な減少となりました。過去のデータを通じて見ると、シード生産は年ごとの変動が非常に大きく、主に気象条件や農業投資の動向、そして需要予測の精度によって上下しています。
シードは直接的な消費を目的とした作物ではないため、食糧作物に比べて需要が限定的であり、栽培者数も限られています。そのため、市場の変化や農政の動向が生産量に直結しやすいという特徴があります。
主要生産国別の特徴と傾向
カナダ(112.2kt、前年比 -29.56%)
カナダは圧倒的なシード生産国で、世界全体の半数以上を占めます。2023年は約30%の減少を記録し、これは干ばつや高温などの気象条件に加え、作付面積の減少も影響したと考えられます。カナダでは牧草種子や油糧種子、穀類種子の生産が活発で、国内外の農家への供給源となっています。
今後の展望としては、気候変動への対応とともに、耐病性や干ばつ耐性を持つ品種の種子需要が高まることで、再び増産に転じる可能性があります。
タイ(36.99kt、前年比 -0.132%)
タイは東南アジアで最大級のシード供給国の1つで、特に米・トウモロコシの種子生産が盛んです。2023年の減少幅はごくわずかで、ほぼ横ばいで推移しています。農業が主要産業である同国では、国家主導の育種・種子普及政策が1定の成果をあげており、将来的にも安定した供給体制が維持される見込みです。
アルゼンチン(36.67kt、前年比 +1.526%)
南米ではアルゼンチンが最も大きなシード生産国で、2023年にはわずかに増産しました。同国では、大豆・とうもろこしなどのGM(遺伝子組み換え)品種の種子市場が強く、外資系企業のプレゼンスも大きいです。将来の気候耐性品種の需要増に応じて、輸出型の種子産業として発展する可能性があります。
オーストラリア(4.923kt、前年比 -0.14%)
オーストラリアは牧草や雑穀類の種子を中心に生産しています。2023年はほぼ前年並みの水準を維持しており、気候に強い品種の生産や国内需要に支えられた形です。干ばつリスクはあるものの、自給自足型の農業種子インフラが安定生産を支えています。
トルコ(4.192kt、前年比 -13.53%)
トルコは中東・中央アジアへの種子供給国として、特に小麦や豆類の品種に強みを持っています。2023年は2桁の減少を記録しましたが、これは地域的な旱魃や水不足の影響が考えられます。将来的には地域協定や農業支援制度によって回復が期待されます。
ウルグアイ(3.815kt、前年比 +0.324%)
アルゼンチンと同様に南米での種子生産国であり、2023年は微増。同国では小規模ながら、高品質種子の輸出を中心としたビジネスモデルが確立されつつあります。
モロッコ(0.0939kt、前年比 +0.321%)、メキシコ(0.00293kt、前年比 -10.67%)
両国とも生産量は極めて小さく、年ごとの変動も激しいです。灌漑の有無や政府の農業支援制度が生産に強く影響し、特にメキシコでは種子市場の整備が未成熟な段階にあります。
シード市場の構造と今後の予測
気候変動への適応と種子需要の変化
世界的に気候変動の影響が拡大する中、耐乾性・病害虫耐性・短期育成品種などの開発が急務となっています。これにより、高性能種子の需要は高まると予想されますが、その1方で生産者側の技術的・経済的負担が課題として残ります。
農業資材の供給と地政学リスク
種子はグローバル農業資材チェーンの1部であり、国際的な流通障害(例:戦争、物流停滞、経済制裁)により、生産・輸出入が大きく左右されます。そのため、自国での種子自給を目指す国が今後さらに増えることが予測され、地産地消型の種子市場が成長する可能性があります。
民間企業と公共種子研究の融合
特に北米や南米では、民間企業によるハイブリッド種子や遺伝子組み換え品種の開発が進んでおり、農業とバイオテクノロジーの融合がシード市場を牽引しています。将来的には、より小規模な国でも国際ライセンスの導入やオープンソース種子運動が注目されるかもしれません。
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