世界のシード生産動向:カナダが大幅減、健康需要に注目

ナッツ類
生産量



2023年の世界のシード生産量は198.9ktで、前年比19.19%の減少。最大生産国カナダでは干ばつの影響で大きく落ち込みました。タイやアルゼンチンは比較的安定。気候変動や価格変動が課題となる中、健康需要や植物油市場の拡大により、今後の需要は堅調に推移する見込みです。

生産量のデータとグラフ

シード生産量の最大と最新

世界 カナダ タイ アルゼンチン ハンガリー オーストラリア トルコ ウルグアイ
最新 2023年 2023年 2023年 2023年 2017年 2023年 2023年 2023年
最大期 2004年 2004年 2019年 1970年 1996年 1978年 1962年 1962年
最新値[kt] 198.9 112.2 36.99 36.67 5.734 4.923 4.192 3.815
最大値[kt] 377.9 300.5 37.19 107 36.07 21.82 23 5.034
前年比[%] -19.19 -29.56 -0.1324 1.526 29.73 -0.1402 -13.53 0.324
全体比[%] 100 56.42 18.6 18.43 2.883 2.475 2.108 1.918

 

これまでの推移

シードの生産量
最新の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

シード生産量についての推移と展望

1961年以降、世界のシード生産量はおおむね増加傾向にありました。植物油の需要拡大、健康志向の高まり、畜産飼料やバイオ燃料用途によって、特に1990年代以降急伸しています。

しかし、2023年の世界の生産量は198.9ktで、前年比-19.19%と大幅な減少が記録されました。これは主要生産国における気象災害(干ばつ・長雨)や作付け転換、農業コスト上昇が影響したと考えられます。


主要生産国の動向と地域別の特徴

カナダ(112.2kt / 世界シェア 56.42%)

カナダは世界最大のシード生産国で、特にフラックスシード(亜麻仁)キャノーラ種の一大生産地。しかし、2023年は前年比-29.56%と大幅な減少。主因は西部平原地帯の干ばつと、輸出価格の下落による作付け縮小です。今後は、持続可能な農業や代替油脂市場(オメガ3系など)へのシフトによって回復が見込まれます。


タイ(36.99kt / 18.6%)

主にセサミ(ごま)や油用ヒマワリ種子を生産。気候的に複数回の収穫が可能で、安定した生産力を有します。前年比-0.1324%とほぼ横ばいで、地域経済や家庭農業の支えになっています。

今後はASEAN市場の植物油需要拡大とともに、契約栽培や輸出型生産モデルの強化が鍵となります。


アルゼンチン(36.67kt / 18.43%)

南米における有力生産国。ヒマワリ種サフラワーなど油料シードを中心に栽培。前年比+1.526%と微増し、安定した生産力を示しています。国内経済の不安定さと輸出関税が課題となっていますが、中国・インド市場向けの輸出が堅調です。


ハンガリー(5.734kt / 2.883%)

2023年は前年比+29.73%と急増。欧州連合の生物多様性政策作物輪作の推進が背景にあります。気候適性が高く、高品質なヒマワリ種子の輸出が評価されています。


オーストラリア(4.923kt / 2.475%)

乾燥地適性作物(特にサフラワーやヒマワリ)を活かした生産が特徴。前年比-0.1402%と微減。輸出先としてはアジアが中心で、今後の水資源の確保が成長の鍵となります。


トルコ(4.192kt / 2.108%)

多様な種子(ごま、ひまわり、ケシなど)を伝統的に生産。前年比-13.53%の減少は、経済危機と気象変動による農業収益悪化が原因とされます。


ウルグアイ(3.815kt / 1.918%)

小国ながらも品質の高い油用シードの生産で知られます。前年比+0.324%と堅調な増加を維持。南米域内でのニッチ市場の確保が続いています。


世界のシード生産をめぐる課題

  • 気候変動と水資源問題:干ばつの頻発、極端な気象により安定生産が困難。

  • 市場価格の不安定性:油脂相場の変動が作付け意欲に直結。

  • 農業政策と補助金:EUの環境配慮政策は一部の国には追い風となるが、他国では生産抑制要因にも。

  • 遺伝子組み換え作物(GMシード)の是非:国による規制差が大きく、貿易障壁の一因ともなる。


今後の展望と生産動向予測

  • 高機能シード市場の成長:フラックスシード(食物繊維・オメガ3)やセサミなどの健康需要が伸びる。

  • 環境配慮型農業との親和性:輪作・緑肥作物としてシード類は評価され、持続可能な農業モデルに組み込まれる。

  • アジア・アフリカ市場での拡大余地:輸入依存からの脱却を目指し、現地生産の拡大が進む可能性。

  • 気候適応型品種の導入:干ばつ・高温に耐える品種への移行が鍵。

 

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