シルクの世界生産量は2022年に91.42ktに達し、中国とインドが9割以上を占めています。中国は54.7%、インドは40.02%を生産し、ともに前年比増。気候変動や若者の離農が課題となる一方、サステナブル素材としての再評価が進んでおり、今後は高付加価値市場が成長の鍵となります。
生産量のデータとグラフ
シルク生産量の最大と最新
世界 | 中国 | インド | ルーマニア | ウズベキスタン | ベトナム | タイ | 北朝鮮 | |
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最新 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2017年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 |
最大期 | 2015年 | 2015年 | 2022年 | 2017年 | 2022年 | 1995年 | 1991年 | 1989年 |
最新値[kt] | 91.42 | 50 | 36.58 | 2.1 | 2.037 | 1.067 | 0.435 | 0.37 |
最大値[kt] | 204.6 | 170 | 36.58 | 2.1 | 2.037 | 2.1 | 1.612 | 4 |
前年比[%] | 7.039 | 7.066 | 8.327 | 0 | 0 | 0 | -13.52 | 0 |
全体比[%] | 100 | 54.7 | 40.02 | 2.297 | 2.228 | 1.167 | 0.4759 | 0.4047 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
シルク生産量についての推移と展望
シルク(絹)は、蚕(かいこ)の繭から採取される天然繊維であり、古代から高級素材として衣料や装飾品、伝統工芸品に用いられてきました。軽くて強く、光沢のある美しい質感が特徴で、合成繊維では再現できない天然素材ならではの価値があります。2022年における世界のシルク生産量は91.42kt(キロトン)で、前年から7.039%増加しました。
主要生産国とその特徴
中国(54.7%、50kt)
世界最大のシルク生産国である中国は、世界のシルクの過半数以上(54.7%)を担っています。2022年には前年比7.066%の増加を記録し、養蚕と織物の伝統的産業が今なお力強く維持されていることがうかがえます。中国では、浙江省、四川省、雲南省などが主な産地であり、政府による産業支援や技術革新によって、品質の高いシルクの安定供給が続いています。
インド(40.02%、36.58kt)
インドもシルクの大国であり、世界の約40%を生産しています。2022年は前年比8.327%増と順調な成長を見せています。南部カルナータカ州やアッサム州などが主な産地で、多様な品種(ムガ、エリ、タッサーなど)を生産していることが特徴です。家庭単位の養蚕農家も多く、地方の雇用創出にも貢献しています。
ルーマニア・ウズベキスタン(各約2.2%)
ヨーロッパおよび中央アジアで一定の存在感を保っているのがルーマニアとウズベキスタンです。ルーマニアは伝統的に養蚕が行われてきた国で、2.1ktを生産。ウズベキスタンも2.037ktで拡大傾向にあり、旧ソ連時代からの技術と政府支援が背景にあります。
ベトナム・タイ・北朝鮮
この3カ国は小規模ながらも独自の養蚕文化を持っており、特にベトナム(1.067kt)は輸出志向が強く、品質の高い繭の生産に力を入れています。タイ(0.435kt)は前年比で13.52%の減少となっており、産業の縮小や若者の離農が影響していると考えられます。北朝鮮(0.37kt)は情報が限られているものの、一定量のシルクを国内用途中心に生産しています。
シルク産業の課題
若年労働力の減少と後継者問題
養蚕は手間と時間がかかるため、若年層の担い手が減少しており、特に小規模農家が多いインドやタイでは深刻な課題となっています。
天候依存と気候変動
蚕は高温多湿な環境に弱く、気候変動による異常気象や水不足が生産に影響を与えています。近年では中国やインドでも、気象条件の悪化により収量が不安定化するケースが増えています。
代替繊維との競合
合成繊維やリサイクル繊維の普及により、シルクの高コストや管理の難しさが敬遠される傾向にあります。特にファッション業界では、安価で大量生産可能な素材が優先されがちです。
今後の見通しと戦略
中国とインドの二大国の主導継続
今後も中国とインドが世界のシルク市場をけん引すると予想されます。両国とも政府の農業支援政策や技術革新、輸出戦略により、一定の生産量と品質を維持する見込みです。
新興国の台頭と地域分散
ウズベキスタンやベトナムなどでは、輸出向けのシルク生産の拡大が見込まれます。これにより、地域的な生産分散が進み、特定国への依存を和らげる効果が期待されます。
サステナビリティとブランド価値
環境負荷が低く、生分解性があるシルクは、持続可能なファッション素材として見直されています。今後は「オーガニックシルク」や「フェアトレード・シルク」など、ブランド価値の高い商品の需要が拡大すると考えられます。
まとめ
シルクは依然として世界中で価値ある天然素材とされており、特に中国とインドが圧倒的なシェアを占めています。今後の課題は、若年労働力の確保、気候変動への対応、そして持続可能性の向上です。適切な政策と技術支援があれば、伝統産業としての地位を保ちつつ、新たな成長機会を生み出すことができるでしょう。
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