2022年の世界のシルク生産は91.42ktで前年比+7.0%。中国とインドが全体の約95%を占め、安定した成長を続ける一方、タイやブラジルでは減産。中央アジアでは増加傾向。将来は気候変動や担い手不足への対応、高付加価値化・エシカル消費対応がカギとなり、品質重視の国が市場で優位に立つと予測されます。
シルクの生産量ランキング
各国 | 最新値[kt] | 全体比[%] | 前年比[%] | |
---|---|---|---|---|
世界 | 91.42 | 100 | +7.039 | |
1 | 中国 | 50 | 54.7 | +7.066 |
2 | インド | 36.58 | 40.02 | +8.327 |
3 | ウズベキスタン | 2.037 | 2.228 | |
4 | ベトナム | 1.067 | 1.167 | |
5 | タイ | 0.435 | 0.476 | -13.52 |
6 | 北朝鮮 | 0.37 | 0.405 | |
7 | ブラジル | 0.3 | 0.328 | -19.57 |
8 | イラン | 0.275 | 0.301 | +1.103 |
9 | タジキスタン | 0.197 | 0.216 | +20.7 |
10 | アフガニスタン | 0.05 | 0.0547 | +5.13 |
11 | キルギスタン | 0.0473 | 0.0518 | +8.135 |
12 | カンボジア | 0.0251 | 0.0275 | -0.397 |
13 | 日本 | 0.01 | 0.0109 | |
14 | マダガスカル | 0.008 | 0.00875 | |
15 | トルコ | 0.005 | 0.00547 | |
16 | インドネシア | 0.003 | 0.00328 | |
17 | 韓国 | 0.001 | 0.00109 | |
18 | フィリピン | 0.001 | 0.00109 | -50 |
19 | エジプト | 0.001 | 0.00109 | -50 |


詳細なデータとグラフ
シルクの現状と今後
2022年の世界全体のシルク生産量は 91.42kt(キロトン)。前年比で +7.039% と大きく増加しました。これは、世界的にシルク需要が安定しており、また中国やインドといった主要生産国が生産拡大を進めたことが主因と考えられます。
主要生産国の特徴と動向
中国(50kt、+7.066%)
世界最大のシルク生産国であり、全体の約55%を占めます。前年比7%の増加は、生産の安定性と技術進展、政府支援政策の成果と推測されます。中国ではシルクは単なる農業製品ではなく、伝統工芸・観光・輸出に密接につながっており、継続的な成長が見込まれます。
インド(36.58kt、+8.327%)
インドも大きなシルク生産国で、特にマルベリー(桑)養蚕の割合が高い国です。前年比で8%以上増加しており、政府の農村振興策や手工芸支援、女性の雇用創出策の1環としてシルク産業が重視されていることが背景にあります。
ウズベキスタン(2.037kt)
中央アジアで最大のシルク生産国。伝統的に養蚕文化が根付いており、シルクは輸出産業としても価値があります。前年比の数値は不明ですが、安定的な生産基盤が整っています。
ベトナム(1.067kt)
小規模ながら、品質の高いシルクを生産することで知られています。近年は観光・手工芸との連携で高付加価値製品を目指す動きも見られます。
タイ(0.435kt、-13.52%)
タイでは、伝統的な手織り絹の文化がありますが、前年比で大幅減少。これは高齢化による担い手不足や、機械化への対応遅れなど構造的課題が影響していると考えられます。
北朝鮮(0.37kt)
情報は限られますが、国家主導で1定の生産が維持されていると推測されます。
ブラジル(0.3kt、-19.57%)
南米唯1の大規模シルク生産国。前年比では約20%減少しており、需要減やコスト高騰、他作物への転換が背景と考えられます。
イラン(0.275kt、+1.103%)
緩やかな増加。中東地域において養蚕の伝統は古く、復興的な動きもあり得ます。
タジキスタン(0.197kt、+20.7%)
前年比で20%以上の増加。これは国策によるシルク産業の振興や国際援助の影響と推測されます。中央アジアの中で急成長が期待される地域です。
アフガニスタン(0.05kt、+5.13%)
非常に小規模ですが、前年比での増加は注目に値します。農村経済再建の1環として、養蚕が注目されている可能性があります。
地域別の共通傾向
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アジア圏に生産が集中:世界のシルクのほとんどはアジア地域で生産されており、特に東アジア〜南アジアが中心です。
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伝統と産業の融合:中国・インド・タイなどでは、シルクが文化と経済の両面で重要な位置を占めており、観光や工芸と結びついた発展が見られます。
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生産規模の2極化:中国・インドが圧倒的な規模を持つ1方、他国は小規模であり、品質やブランド価値で差別化を図っている傾向があります。
シルク生産の課題と将来展望
気候変動への影響
桑の栽培には安定した気温と水が必要であり、異常気象は養蚕に悪影響を及ぼします。今後の生産安定性には、耐乾性品種や新技術の導入が鍵となります。
高齢化と担い手不足
タイやベトナムなどでは、伝統的な養蚕が高齢者に依存しているケースが多く、若年層の3入が課題です。技術継承と新規就農者支援が重要です。
持続可能性とエシカル生産の需要
環境・動物福祉・フェアトレードなど、倫理的な製品への関心が高まっており、「ピースシルク」や有機シルクなどの新たな潮流も生まれています。これは生産国にとって付加価値のチャンスです。
デジタル技術とマーケティングの進化
EC市場やSNSを活用して、小規模生産者でもグローバルな販売が可能になってきています。シルク産業においても、ITの活用が地域経済に大きな影響を与える可能性があります。
今後の展望
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中国・インドの2強構造が当面継続 これらの国は政府の支援・市場・伝統文化を活かし、今後も生産拡大が見込まれます。
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中央アジア・南米はポテンシャル有り ウズベキスタンやタジキスタン、ブラジルなどでは、支援体制が整えば、今後の増産余地があると見られます。
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多様化と高付加価値化がカギ 量ではなく質を重視する流れに対応できる国が、将来の市場で優位に立つと考えられます。
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