世界のクランベリー生産動向:米加中心の供給構造と課題の分析

果物(南国)
生産量

2023年の世界クランベリー生産量は535.2ktで前年比-9.66%。アメリカが全体の約7割を占め安定成長、カナダは大幅減少。新興のトルコや東欧諸国も台頭。今後は品質重視と気候対応が重要となる。

生産量のデータとグラフ

クランベリー生産量の最大と最新

世界 アメリカ カナダ トルコ アゼルバイジャン ルーマニア ウクライナ ラトビア
最新 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2017年 2023年 2017年
最大期 2016年 2016年 2022年 1991年 2007年 2003年 2013年 1997年
最新値[kt] 535.2 367.9 151.3 12.17 2.818 0.5852 0.415 0.3637
最大値[kt] 633.6 436.7 210.3 17 3.4 1 0.8 14
前年比[%] -9.657 0.9329 -28.04 -11.51 0.1461 0.6104 -1.376 -55.41
全体比[%] 100 68.73 28.27 2.273 0.5265 0.1093 0.07753 0.06795

これまでの推移

クランベリーの生産量
最新の割合

詳細なデータとグラフ

クランベリー生産量についての推移と展望

クランベリーは主に北米で栽培され、ジュース、ドライフルーツ、サプリメントなどに広く利用されています。2023年の世界の総生産量は535.2kt(キロトン)で、前年比では-9.657%と減少傾向を示しました。これは近年の気候変動、需給バランスの調整、生産過剰時代の反動による在庫調整などが影響しているとみられます。

アメリカ―圧倒的なシェアを持つ主力生産国

アメリカは2023年に367.9ktのクランベリーを生産し、世界全体の68.73%を占めています。前年比ではわずかに+0.9329%の増加と堅調でした。主な産地はウィスコンシン州とマサチューセッツ州で、灌漑と湿地農法を駆使した生産技術が確立されています。ただし、アメリカでは近年「価格低迷」や「過剰在庫」といった課題もあり、クランベリー委員会は一部で生産抑制策や品質重視への転換を促進しています。

カナダ―アメリカに次ぐ大生産国の苦戦

カナダは151.3ktを生産し、世界全体の28.27%を占める重要な国です。しかし2023年は前年比で-28.04%と大幅な減少となりました。主にケベック州を中心に栽培されていますが、気候条件の悪化や収穫時期の霜害、病害虫の被害などが原因と考えられます。また、米国市場への依存度が高いため、アメリカの生産・価格動向に連動しやすいという脆弱性も課題です。

トルコ―新興生産地としての注目

トルコは2023年に12.17ktを生産し、世界シェアの2.273%を占めています。前年比は-11.51%と一時的な減少となっていますが、これは気象変動の影響や水資源の制限によるものとみられます。トルコでは、主に黒海沿岸地域で栽培されており、将来的には中東およびヨーロッパ市場への供給基地としての役割が期待されています。

東欧・旧ソ連諸国の存在感

アゼルバイジャン(2.818kt)、ルーマニア(0.5852kt)、ウクライナ(0.415kt)、ラトビア(0.3637kt)などは生産規模こそ小さいものの、自国内消費や周辺国輸出を支える重要な供給源です。とくにアゼルバイジャンとルーマニアは前年比微増(+0.1461%、+0.6104%)と安定感を保っており、適度な気候条件と小規模農業の粘り強さが目立ちます。一方、ラトビアは-55.41%と急減しており、栽培面積の縮小や収益性低下の影響が懸念されます。

クランベリー生産を取り巻く課題と環境影響

クランベリーは湿地で栽培されるため、水資源の確保が重要ですが、近年は干ばつや異常気象の頻発により安定供給が難しくなっています。また、単一作物化による病害リスクも高まり、持続可能な農業モデルの模索が求められています。さらに、過去の過剰生産に起因する価格崩壊とその調整局面も現在進行中で、生産調整や品質競争へのシフトが求められています。

今後の見通しと持続可能な戦略

今後、世界のクランベリー市場は「量から質へ」の転換が加速すると予想されます。主力市場であるアメリカでは高品質・機能性重視の製品が成長し、カナダや東欧では気候変動リスクへの対応策が鍵となります。トルコやアゼルバイジャンなどは地域輸出と付加価値加工による差別化が進むでしょう。持続可能性と収益性の両立、そして安定供給体制の確立が、今後の世界クランベリー産業の命運を分ける要素となります。

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