世界のキノア生産が急減:ペルー・ボリビア主導の縮小と今後の展望

天然素材
生産量



2023年のキノア生産量は約11.2万トンで、ペルーとボリビアが世界の99%以上を占めています。だがペルーは前年比38%減と大幅に落ち込み、ブームの反動や価格低下が影響。今後は内需拡大や加工品化が鍵となります。

生産量のデータとグラフ

キノア生産量の最大と最新

世界 ペルー ボリビア エクアドル ブータン
最新 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年
最大期 2015年 2014年 2015年 2015年 2020年
最新値[Mt] 0.1123 0.07048 0.04138 0.0003784 1.287E-5
最大値[Mt] 0.1938 0.1147 0.07545 0.01271 0.000102
前年比[%] -29.76 -38.29 -7.442 -57.17 -28.5
全体比[%] 100 62.79 36.86 0.3371 0.01147

 

これまでの推移

キノアの生産量
最新の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

キノア生産量についての推移と展望

キノア(quinoa)は、南米アンデス原産の擬穀類で、高たんぱく・グルテンフリーという特徴から「スーパーフード」として世界中で注目されています。世界保健機関(WHO)や国連もその栄養価を評価し、2013年には「国際キノア年」として宣言されました。

しかし2023年の世界の生産量は0.1123Mt(11万2300トン)で、前年比-29.76%と大幅な減少を記録しています。


主要生産国の現況と構造的課題

ペルー(0.07048Mt/世界シェア62.79%)

世界最大の生産国ながら、前年比-38.29%の大幅減少。近年、輸出依存度の高さと価格の乱高下により、農家のキノア離れが進んでいます。また、過剰栽培による土壌劣化も報告されており、持続可能な生産への転換が急務です。

ボリビア(0.04138Mt/36.86%)

ペルーに次ぐ生産国で、伝統的に有機栽培のキノアを続けてきました。2023年の生産は前年比-7.442%減と比較的小幅ですが、収益性の低下が深刻で、農民の都市流出なども影響し生産縮小が懸念されます。

エクアドル(0.0003784Mt/0.3371%)

生産規模は非常に小さく、前年比-57.17%の激減となりました。輸出競争力が乏しく、国内消費も限定的なため、他作物との兼業での継続が多く、今後の生産拡大には政府支援と市場開拓が不可欠です。

ブータン(1.287E-5Mt/0.01147%)

キノアのアジアでの試験的導入国として注目されましたが、前年比-28.5%減と縮小傾向です。地理的・気候的には栽培が可能ですが、知識不足・消費文化の不在が障壁となっており、普及には教育と販路開拓が必要です。


グローバルブームからの反動 ― キノア市場の変調

一時的な過熱と価格の乱高下

2010年代半ばに欧米での需要が急増し、ペルー・ボリビアでの輸出が急拡大しました。価格は高騰しましたが、2016年以降は需要の一巡と他の代替穀物の登場により、価格はピーク時の半分以下にまで下落したと言われています。

農家経済の不安定化

生産農家は価格下落の直撃を受け、他作物への転換や離農が相次ぎました。また、集約的な単一栽培による環境負荷の増加が、地域社会で問題視され始めています。


今後の展望 — 脱「輸出依存」へ向けた多角的戦略

地産地消型の促進

従来の輸出主導型モデルから、国内消費向け生産への転換が今後の鍵となります。例えば、ペルーでは栄養改善を目的に、学校給食へのキノア導入などの政策が進行中です。

新興生産国の可能性

ブータンやインド北部、アフリカ高地など、気候条件が適合する地域で新規導入の試みが進められています。ただし、インフラ、技術支援、需要創出の3点セットが成功の鍵となります。

加工品・高付加価値商品の開発

シリアル、バー、麺などの加工食品化や、有機認証付き製品など付加価値の高いブランド化が、キノア生産の再活性化につながる可能性があります。


まとめ ― キノア生産は岐路に立っている

2023年のキノア生産は大幅な減少を記録し、グローバル市場の不安定性が露呈しました。特にペルー・ボリビアなどの主産地では、過去のブームの反動で農業が揺らいでいます。一方で、持続可能な栽培モデルへの転換、新規地域での導入、加工・内需の強化といった多面的な対応により、キノア生産は再成長の可能性を秘めています。世界は今、次のキノアのあり方を模索する段階にあると言えるでしょう。

 

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