世界のカラント生産の動向と国別特徴、ロシア主導の今後とは

果物(南国)

2023年のカラント世界生産量は759.3ktで前年比微減。ロシアが全体の約70%を占める中、ポーランドやドイツは減産傾向。フランスやニュージーランドは高付加価値市場向けに拡大中。今後は健康食品や加工需要が成長の鍵となる。

カラントの生産量ランキング

2023年
降順昇順
各国最新値[kt]全体比[%]前年比[%]
世界759.3100-0.105
1ロシア531.269.97+4.267
2ポーランド129.717.08-11.04
3ウクライナ22.843.008-7.493
4イギリス15.332.018+3.01
5フランス12.891.698+29.42
6ドイツ12.61.659-11.08
7オランダ7.761.022-4.198
8ニュージーランド4.9630.654+1.04
9オーストリア3.430.452-30.43
10リトアニア2.720.358-46.25
11アゼルバイジャン2.2440.296+0.265
12ハンガリー2.230.294-24.66
13ウズベキスタン1.6690.22+0.0372
14フィンランド1.360.179-33.33
15デンマーク1.30.171-10.96
16イタリア1.260.166+10.53
17モルドバ1.070.141+109.4
18チェコ0.880.116-20
19ベルギー0.720.0948-8.861
20オーストラリア0.5710.0752-0.429
21ノルウェー0.4910.0647-8.052
22ラトビア0.40.0527-64.6
23ポルトガル0.270.0356+17.39
24ギリシャ0.270.0356-30.77
25ルーマニア0.210.0277+320
26スウェーデン0.120.0158-60
27キルギスタン0.1110.0146-0.44
28エストニア0.110.0145-63.33
29アイルランド0.10.0132
30ブルガリア0.090.0119+50
31北マケドニア0.08010.0105+0.276
32チリ0.080.0105
33スイス0.06530.0086+28
34スロバキア0.060.0079-33.33
35スペイン0.030.00395-25
36スロベニア0.010.00132-75
37日本0.009150.00121-0.218
38ルクセンブルク00
39マルタ00
40アメリカ00
カラントの生産量
カラントの生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

カラントの現状と今後

カラント(フサスグリ)は、冷涼な気候を好むベリー類で、ブラックカラント(黒房スグリ)が主流です。主にジュース、ジャム、製菓、薬用(ビタミンC補給)として利用されます。生食向きではないため、加工需要が市場の中心で、特定の地域・用途に特化した果実といえます。

2023年の世界全体の生産量は759.3ktとされ、前年比-0.105%とほぼ横ばいながら、国別に見ると大きなばらつきが見られます。これは、気候変動、生産者の高齢化、価格低迷、輸出入政策など多岐にわたる要因が影響しています。


主要生産国別の動向と生産の特徴

ロシア(531.2kt、前年比+4.267%)

圧倒的な世界シェア(約70%)を誇るカラントの生産国。冷涼な気候と広大な農地、国内需要(特に加工食品・家庭用ジュース)に支えられ、比較的安定した生産体制を維持しています。2023年も順調な伸びを示しており、ロシア経済の1部としての家庭菜園的生産や地産地消型農業の根強さが背景にあります。

ポーランド(129.7kt、前年比-11.04%)

かつてはヨーロッパ最大のカラント輸出国。収穫・加工インフラが整っており、高品質なブラックカラントの原料供給地です。しかし、近年は価格の低迷・収益性の悪化・労働力不足が減産の要因となっています。今後の回復には輸出戦略と機械化の推進が不可欠です。

ウクライナ(22.84kt、前年比-7.493%)

ロシアやポーランドと同様、冷涼な気候が適しており、潜在的な生産力は高いですが、地政学的リスクやインフラの損傷が生産の足かせになっています。輸出可能性がある反面、輸送手段や加工業者の減少により安定供給が困難な状況が続いています。

イギリス(15.33kt、前年比+3.01%)

国内のジュースメーカー(特にカラントベースの清涼飲料)に向けた需要に支えられています。プレミアム志向と地域ブランド化が進んでおり、生産量は限定的ながら価値の高い流通が見られます。今後も安定した生産が続くと予想されます。

フランス(12.89kt、前年比+29.42%)

2023年に大幅な増産を見せた注目国。ワイン用果実、リキュール(カシス)向けの加工需要が背景にあり、観光地や高付加価値市場での需要に支えられています。収量の変動は気候や労働供給に左右されやすい1方、ブランド価値による価格安定が強みです。

ドイツ(12.6kt、前年比-11.08%)

伝統的なカラント生産国の1つですが、農家の高齢化・収益性の低さ・土地の転用が減産の背景。今後の持続には自動化・ドローン農業などの技術導入が求められています。

オランダ(7.76kt、前年比-4.198%)

主に温室や集約型小規模農地での栽培。品質は高いが、コスト構造が重いため、大量生産は困難。国内消費向けに特化し、今後の成長は限定的と考えられます。

ニュージーランド(4.963kt、前年比+1.04%)

南半球で珍しいカラント生産国。有機栽培・高付加価値輸出型のモデルが特徴です。主に日本やアジア向けの栄養補助食品市場などで成長が期待され、今後も安定成長が見込まれます。

オーストリア(3.43kt、前年比-30.43%)

急減傾向にあり、気候変動・市場縮小が主因。小規模農家による伝統栽培が主体のため、大量生産には向かない構造が続いています。

リトアニア(2.72kt、前年比-46.25%)

大幅な減少は、経済的要因や生産性の低さ、若手農業者不足などが影響。冷涼な気候には適しているが、再生には農業支援策が不可欠です。


地域構造と生産の再編成の兆し

世界のカラント生産は、ロシア・東欧圏に大きく依存しており、そのほかの地域では小規模・高付加価値型が主流です。気候の適応性と機械収穫の可否が生産地選定の鍵になっており、労働集約的な収穫作業の負担が減産の大きな原因の1つです。

また、加工食品・健康食品としての需要が成長のチャンスとなっており、特にアジア・中東など新市場への輸出開拓が注目されます。


将来予測と注目のトレンド

成長が期待される要因

  • 健康食品市場での再評価(ビタミンC・ポリフェノール)

  • ジュース・清涼飲料・リキュールなど加工需要の増加

  • 有機・高品質・地産ブランドへのシフト

  • ロシアやニュージーランドなど安定供給地域の強化

懸念される課題

  • 労働力不足による手摘み収穫の限界

  • 価格の低迷と農家離れ

  • 気候変動による不作の頻発

  • ポーランドやドイツなど伝統国での構造的衰退


まとめと今後の展望

カラントの世界市場は、ロシアの圧倒的な供給力と、東欧諸国の減産トレンドが大きな構造変化を招いています。1方で、加工品需要や高付加価値市場への進出が鍵を握り、新興輸出国(ニュージーランドやフランス)の動向が今後の成長を左右するでしょう。

将来的には、世界全体の生産量は横ばい~微増に留まると予想されますが、地域間でのシェア変化とブランド価値の重要性がますます高まると考えられます。

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