世界のオリーブ生産は2022年に2.743Mtで前年比-17.48%と大幅減。最大産地スペインの干ばつ被害が主因。対照的にトルコやチュニジアは増産。気候変動・病害・労働力不足が大きな課題である一方、トルコや北アフリカの成長が期待される。今後は気候対応型農業や高付加価値製品への転換が生産の持続性を左右する。
生産量のデータとグラフ
オリーブ生産量の最大と最新
世界 | スペイン | イタリア | ギリシャ | トルコ | チュニジア | シリア | モロッコ | |
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最新 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 |
最大期 | 2018年 | 2018年 | 1983年 | 1997年 | 2022年 | 2020年 | 2006年 | 2019年 |
最新値[Mt] | 2.743 | 0.6657 | 0.331 | 0.3133 | 0.3024 | 0.2352 | 0.1894 | 0.1815 |
最大値[Mt] | 3.691 | 1.79 | 0.824 | 0.4113 | 0.3024 | 0.3999 | 0.2524 | 0.2042 |
前年比[%] | -17.48 | -55.41 | -2.242 | 22.52 | 36.15 | 63.11 | 82.33 | -6.875 |
全体比[%] | 100 | 24.27 | 12.07 | 11.42 | 11.02 | 8.574 | 6.905 | 6.616 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
オリーブ生産量についての推移と展望
オリーブは紀元前3000年頃から栽培されていたとされる、最も古い栽培植物の一つであり、特に地中海沿岸地域に根付いた重要作物です。果実そのものだけでなく、そこから採取されるオリーブオイルは食文化・宗教儀礼・医療においても欠かせない存在でした。現代でも、健康志向の高まりからオリーブオイルの需要は増加し続けています。
世界のオリーブ生産推移と2022年の概況
FAO統計などによれば、1960年代以降、世界のオリーブ生産は着実に増加してきましたが、2022年の生産量は2.743Mt(百万トン)で前年比 -17.48%と大きく減少しました。この大幅な減少は、主に気候変動の影響(猛暑・干ばつ)と考えられており、とくに主要産地のスペインで壊滅的な影響が見られました。
主要生産国の特徴と生産変動の要因
スペイン(0.6657Mt|シェア24.27%|前年比 -55.41%)
世界最大のオリーブ生産国であり、特にアンダルシア地方は最大の産地です。しかし2022年は記録的干ばつと高温により収量が半減以上。スペインの不調がそのまま世界全体の生産量減少を牽引しています。
イタリア(0.331Mt|12.07%|前年比 -2.242%)
イタリアはオリーブオイルの品質評価で世界的に高い評価を受ける国。近年は害虫(オリーブバエ)や細菌性病害(Xylella fastidiosa)の影響が深刻化しており、生産地の南北シフトが進んでいます。
ギリシャ(0.3133Mt|11.42%|前年比 +22.52%)
オリーブはギリシャの食文化と農業の象徴。近年は天候に恵まれ、収量は回復傾向。品質重視の小規模生産者が多く、EU内でのブランド力を強化中。
トルコ(0.3024Mt|11.02%|前年比 +36.15%)
トルコではエーゲ海地域を中心に生産が増加中。オリーブの安定供給国としての地位を確立しつつあり、国内消費も伸びています。トルコ政府の農業振興策も生産拡大に寄与。
チュニジア(0.2352Mt|8.574%|前年比 +63.11%)
アフリカ最大のオリーブ生産国で、オリーブオイルの輸出が農業外貨収入の柱。気候が比較的安定していた2022年は生産急増。EU向けに安価で高品質なオイルを提供し、注目を集めています。
シリア(0.1894Mt|6.905%|前年比 +82.33%)
内戦の影響が続く中でも、地方での小規模生産が回復傾向。治安が安定した地域では農業復興が進んでいます。2022年は雨量が比較的多く、収穫量が大幅に回復しました。
モロッコ(0.1815Mt|6.616%|前年比 -6.875%)
モロッコはオリーブ生産拡大政策を進めてきましたが、2022年は干ばつが響きました。EU・アメリカ市場への輸出志向が強く、灌漑インフラの整備が課題です。
世界のオリーブ産業が直面する課題
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気候変動の影響拡大 干ばつ・高温・異常気象が花の形成・果実の発育に深刻な影響を与えており、特に地中海沿岸で顕著です。
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病害虫と植物病原体 Xylella fastidiosaのような致命的病害が広がっており、農地の枯死・伐採被害が拡大。長期的な品種転換が求められています。
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労働力不足と高齢化 伝統的な手摘みに依存する地域が多く、高齢化や若手離農による労働力不足が深刻化。
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国際価格の不安定さ スペインの生産減により2022年はオリーブオイル価格が高騰。消費国への影響が懸念されます。
今後の展望と生産地の再構築
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気候適応型農業への転換 干ばつ耐性の高い品種への切り替えや、スマート灌漑技術の導入が進むことで、収量安定化が見込まれます。
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生産地の多極化 トルコ、チュニジア、モロッコなどでスペインに代わる供給基地の形成が進んでおり、今後の成長エリアとなります。
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高品質・高付加価値化路線 イタリア・ギリシャのようにPDO(原産地名称保護)制度を活用したブランド化により、高価格帯市場への展開も拡大。
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地政学的安定の影響 シリアやチュニジアなどでは、政治・治安の安定が生産復興のカギとなるため、持続的な支援が重要。
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