世界のオファル（内臓肉）生産動向と国別比較｜2023年の特徴と今後

2023年の世界のオファル生産量は1242Mtで前年比6.836%増。アメリカや中国、ブラジルが主導し、食文化や輸出市場によって国ごとの需要に差がある。内臓肉は今後、食品のみならず医薬やペット市場でも注目され、多用途化が進むと見られる。

オファル（offal）は、動物の内臓や副産物を指す食材であり、文化や地域によって需要や調理法が大きく異なる。近年は食品ロス削減やタンパク源の多様化の観点から注目が集まっている。本稿では、1961年から2023年にかけての長期的データに基づき、世界のオファル生産の変遷、国別の生産動向、課題、そして将来の展望を解説する。

世界のオファル生産の推移と現況

2023年における世界のオファル生産量は1242メガトン（Mt）に達し、前年比+6.836%の顕著な成長を示した。1960年代以降、食肉処理能力の向上や需要の広がりにより、生産は着実に増加してきた。特に発展途上国や食文化において内臓肉の利用が重視される国では、食肉産業の一角として重要な役割を果たしている。

主要国の動向と特徴

• アメリカ（31.39%）　2023年の生産量は389.7Mtで、前年比+12.39%と大幅な増加。屠殺頭数の増加とともに、副産物である内臓肉の取り扱いも整備されている。輸出向けが中心で、国内では限定的な需要だが、アジア諸国やラテンアメリカ向けの市場拡大が生産を支える。

• 中国（23.28%）　生産量は289.1Mt、前年比+4.201%。内臓を積極的に食材として使用する伝統があり、国内需要が非常に高い。地方料理における使用頻度が高く、豚や家禽の副産物は日常的な食卓に登場する。近年は衛生管理基準の強化も進行中。

• ブラジル（10.63%）　132Mtを生産し、前年比+20.24%と急増。大規模食肉産業の副産物としてオファルも大量に生産され、アフリカや中東市場への輸出が成長の鍵となっている。低価格タンパク源として国際的に注目されている。

• アルゼンチン（3.335%）　生産量は41.41Mtで、前年比-29.86%と大きく減少。干ばつや飼料高騰の影響で牛肉全体の生産が落ち込み、それに連動して副産物であるオファルの生産も縮小。伝統的に内臓肉を消費する文化があるが、経済状況が供給にも影響している。

• インド（3.068%）　38.09Mtを生産、前年比+12.91%と高い伸び。牛肉や豚肉の消費に宗教的制限がある一方で、水牛や家禽の副産物が中心。内臓の食用・医薬用需要に加え、ペットフード市場での利用も拡大している。

• ウクライナ（2.499%）　生産量は31.03Mt、前年比+18.5%。国内需要は限定的だが、安価なオファルの輸出先として中東・東欧に需要があり、生産を後押し。戦争による輸出制限の影響は残るが、再開の動きも見られる。

• メキシコ（2.219%）　27.55Mtを生産し、前年比+3.754%。内臓料理（例：モレ、メヌードなど）の文化が強く、国内需要が安定している。冷凍・加工品としての輸出も一定の需要がある。

オファル生産における世界的課題

• 衛生管理と規制の不均一性　国によって内臓肉の処理基準が異なり、輸出入時にトラブルを招くケースが多い。特に発展途上国では施設の衛生管理体制が遅れており、食品安全上の課題が残る。

• 文化による需要の差　内臓肉に対する需要は国・宗教・文化によって極端に異なるため、世界市場の統一化が難しい。一方で、移民や国際化によって新しい需要も生まれている。

• 動物福祉と屠殺倫理　近年は動物福祉に対する意識の高まりから、屠殺過程における倫理的課題も議論されており、これがオファル利用の制限につながる可能性もある。

今後の展望と予測

• アメリカとブラジルが輸出拡大を牽引　工業的食肉処理体制が整っている両国では、内臓の冷凍・加工技術も進んでおり、低所得国への輸出で成長が期待される。

• 中国は安定した内需で拡大続く　都市化の進展に伴い、伝統的料理の再評価や外食産業での需要拡大が予想される。食品安全規制の強化も相まって、国内生産の高品質化が進む。

• 中東・アフリカ市場が新たな成長エリア　人口増加と経済発展により、手ごろなタンパク源としてオファルの輸入需要が拡大。特に宗教的制限が少ない国々では需要が顕著に伸びる見込み。

• 気候変動と飼料コストの影響　家畜全体の生産量に影響する要因が、オファルの供給にも直結する。特に干ばつや国際情勢による飼料輸送の混乱が中長期的なリスクとなる。

• 新たな用途への展開（ペットフード・医薬品）　食品用途以外での利用も拡大中であり、特に先進国ではペット市場や医療材料としての活用が進む。これにより市場の二極化が進む可能性もある。