世界のアーモンド生産動向:主要国の現状と今後の展望

ナッツ類

2023年の世界アーモンド生産量は3,514ktで、前年から3.48%減少。アメリカやオーストラリアの減産が響いた一方、スペインやシリア、イランでは増産が目立つ。今後は需要増に対して水資源と気候変動が課題となるが、持続可能な栽培体制の構築により、一定の成長が見込まれる。

アーモンドの生産量ランキング

2023年
降順昇順
各国最新値[kt]全体比[%]前年比[%]
世界3514100-3.483
1アメリカ179250.99-4.145
2スペイン297.78.471+21
3オーストラリア2607.399-28.77
4トルコ1704.838-10.53
5モロッコ146.14.157-16.9
6シリア135.43.854+328.4
7イラン102.42.914+15.64
8イタリア77.682.211+4.143
9チュニジア70.942.019+1.341
10アルジェリア69.641.982+5.141
11ポルトガル69.511.978+50.39
12アフガニスタン671.907+5.487
13チリ45.891.306-4.582
14ギリシャ36.731.045-7.434
15リビア35.821.019+5.624
16レバノン29.310.834+13.68
17ウズベキスタン28.260.804-8.671
18パキスタン17.380.495-4.01
19イエメン13.40.381+2.209
20イスラエル10.50.299-2.777
21中国100.285-90.38
22アゼルバイジャン4.2360.121-20.35
23パレスチナ3.5120.0999+1.484
24タジキスタン3.1820.0906-0.227
25ヨルダン2.6520.0755+43.49
26フランス2.130.0606-15.48
27ブルキナファソ1.9370.0551+1.256
28キルギスタン1.7190.0489+0.464
29コートジボワール1.6810.0478+0.279
30エスワティニ1.0630.0303+0.782
31トルクメニスタン1.0370.0295-0.105
32ジョージア0.9490.027+0.578
33アルゼンチン0.720.0205+0.716
34モルドバ0.6520.0185+0.479
35ブルガリア0.620.0176-35.42
36イラク0.430.0122-0.42
37キプロス0.420.012
38北マケドニア0.4110.0117-48.69
39アラブ首長国連邦0.3850.0109+182.7
40ハンガリー0.350.00996-14.63
41クロアチア0.130.0037
42サウジアラビア0.1180.00336+0.178
43カタール0.1180.00336+66.2
44カザフスタン0.1020.0029-0.196
45メキシコ0.04770.00136-0.167
46ボスニア・ヘルツェゴビナ0.0360.00102+100
47ネパール0.007950.000226-1.242
48ルーマニア00
49ルクセンブルク00
50リトアニア00
51ラトビア00
52マルタ00
53ポーランド00
54ベルギー00
55フィンランド00
56スロベニア00-100
57スウェーデン00
58オランダ00
59エストニア00
60ウクライナ00
61アイルランド00
アーモンドの生産量
アーモンドの生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

アーモンドの現状と今後

2023年の世界のアーモンド生産量は3,514kt(キロトン)で、前年と比べて-3.483%とやや減少しました。この減少の主因は、最大生産国アメリカと第3位のオーストラリアの大幅な減産です。アーモンドは、温暖で乾燥した気候を好む作物であり、灌漑水資源と気象条件に大きく左右されます。地球温暖化による水不足や気温の変動が、近年の生産変動に強く影響を与えています。

1方で、他の中規模生産国では回復傾向も見られ、スペイン、シリア、イランなどの国々では前年よりも生産量が大きく増加しています。アーモンドの世界的な需要は引き続き高く、健康志向食品としての需要や、植物性タンパク質の代替としての役割も相まって、今後も市場の拡大が予想されます。


主要生産国別の特徴と変化

アメリカ(1792kt、前年比-4.145%)

アメリカは世界アーモンド市場の約51%を占める最大生産国で、特にカリフォルニア州が1大産地です。この地域は灌漑設備が整っている1方、慢性的な干ばつと水資源制限が深刻化しており、今回の減産もその影響が大きいと推察されます。アーモンドの栽培には1kgあたり約10,000L以上の水が必要とされるため、環境負荷や持続可能性が今後の大きな課題となります。それでも、生産効率や輸出インフラの点で他国を大きくリードしています。

スペイン(297.7kt、前年比+21%)

スペインは地中海性気候を活かしたアーモンド栽培が盛んで、2023年は気象条件の安定と新規植栽の成木化が重なったことで、前年比で大きな伸びを記録しました。乾燥地向けの耐乾性品種の普及も貢献しています。今後、EU市場内での供給安定化において重要な役割を担うと見られます。

オーストラリア(260kt、前年比-28.77%)

近年急速にアーモンド生産を拡大してきたオーストラリアは、2023年において大幅な減産に見舞われました。原因としては水資源の逼迫、収穫期の異常気象、そして栽培面積の調整などが挙げられます。オーストラリアはアジア市場向け輸出に強みを持っているため、輸出国としての地位を維持するには持続可能な栽培体制の構築が求められます。

トルコ・モロッコ・イタリアなど

トルコ(170kt、-10.53%)、モロッコ(146.1kt、-16.9%)は天候に左右されやすく、2023年は干ばつや霜害などの影響で減産しました。イタリア(77.68kt、+4.143%)は緩やかな回復傾向にあり、持続可能な農業政策の成果が徐々に表れていると考えられます。


注目すべき増加国とその背景

シリア(135.4kt、前年比+328.4%)

シリアの急激な増加は、過去の戦乱によって壊滅的だった農地が徐々に再建され、農業活動が回復し始めた兆候と考えられます。また、アーモンドは比較的乾燥地でも栽培可能であるため、内陸部での栽培が再開されている可能性があります。

イラン・チュニジア・アルジェリア

これらの国々はアーモンドの伝統的産地でありながらも、これまでは比較的小規模でした。2023年のイラン(+15.64%)、チュニジア(+1.341%)、アルジェリア(+5.141%)の増加は、新たな農業投資や輸出志向の戦略が功を奏している証拠といえるでしょう。特に中東・北アフリカ地域では、水資源を抑えつつ高付加価値を目指せるアーモンドが注目されており、今後の成長が期待されます。


将来予測と課題

世界のアーモンド生産は、総量としては今後も緩やかな成長を続けると見られます。需要面では、健康食品、植物性乳製品(アーモンドミルク)などの消費が安定的に伸びており、これに対応する形で生産が増強されると予想されます。

ただし、最大のリスクは水資源の制約と気候変動です。アメリカやオーストラリアのような大規模生産国では、今後の水利権問題が深刻化する可能性があります。また、トルコやモロッコなどでは、異常気象や生産者の高齢化も障害となります。

1方、スペインやシリア、イランなどは比較的低コストで持続可能な生産が可能な地域として、新たな生産拠点化が進む可能性があります。農業技術や灌漑システムの近代化が鍵となり、小規模生産国の台頭も視野に入れておくべきです。

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