世界のじゃがいも生産は中国やインドを中心に拡大しており、気候変動や労働力不足といった課題に直面しながらも、技術革新や需要の多様化により成長を続けている。将来の安定供給には持続可能な農業の推進と国際協力が不可欠である。
生産量のデータとグラフ
じゃがいも生産量の最大と最新
世界 | 中国 | インド | ウクライナ | アメリカ | ロシア | ドイツ | バングラデシュ | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2023年 | 2021年 | 2023年 | 2011年 | 2000年 | 1995年 | 1963年 | 2023年 |
最新値[Mt] | 383.1 | 93.49 | 60.14 | 21.36 | 19.99 | 19.37 | 11.61 | 10.43 |
最大値[Mt] | 383.1 | 94.41 | 60.14 | 24.25 | 23.29 | 39.91 | 38.7 | 10.43 |
前年比[%] | 2.593 | 1.225 | 7.06 | 2.198 | 9.625 | 2.577 | 8.648 | 2.828 |
全体比[%] | 100 | 24.41 | 15.7 | 5.575 | 5.219 | 5.058 | 3.03 | 2.723 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
じゃがいも生産量についての推移と展望
じゃがいもは世界中で主食または重要な副食として栽培される作物であり、特に中緯度の気候に適した根菜として広く普及しています。1961年から2023年までの長期的な統計を見ると、じゃがいもはその柔軟な生育環境と高いエネルギー効率から、世界各国で重要な農産物としての地位を保ってきました。2023年には、世界の根菜類生産の総量383.1Mtのうち、じゃがいもが大きな割合を占めています。
これまでの生産動向と世界的な増加傾向
1960年代にはヨーロッパが中心的な生産地域でしたが、1980年代以降、中国やインドといったアジア諸国での生産が急増しました。これは主に、人口増加と農業の近代化、都市近郊農業の発展によるものです。2023年時点での世界生産量は前年比2.593%の増加を示しており、依然として需要の拡大に対応する形で成長を続けています。
主要国別の特徴と成長要因
中国(93.49Mt、前年比+1.225%)
中国は世界最大のじゃがいも生産国であり、全体の24.41%を占めます。中国北部や雲南省などで広く栽培され、農業技術の改善により単位面積あたりの収量も向上しています。近年では加工用の需要(フライドポテト・澱粉)も増加傾向にあり、それが安定成長の背景です。
インド(60.14Mt、前年比+7.06%)
急成長を見せているのがインドで、前年比7%以上の増加率は注目に値します。北部のウッタル・プラデーシュ州などが主な産地であり、温暖な気候と灌漑技術の進歩が拡大を支えています。食料自給率向上を目的とした政府支援も生産拡大に貢献しています。
ウクライナ(21.36Mt、前年比+2.198%)
ウクライナは長年じゃがいもの主要生産国であり、家庭菜園も含めた生産が多いのが特徴です。戦争の影響を受けつつも、農村部での根強い生産意欲が全体の維持につながっています。
アメリカ(19.99Mt、前年比+9.625%)
アメリカでは、特にアイダホ州などでの大規模機械化農業により生産効率が非常に高いです。9.6%の成長は、外食産業の回復や加工用需要の増加が背景にあります。
ロシア(19.37Mt、前年比+2.577%)
ロシアも伝統的なじゃがいも大国であり、気候条件に適した地域が広く存在します。2023年は安定的な増加を示していますが、労働力不足や物流課題も依然として存在しています。
ドイツ(11.61Mt、前年比+8.648%)
ドイツはEU内での最大の生産国であり、有機農法や持続可能性に注目が集まる中、質の高い品種開発や輸出にも力を入れています。
バングラデシュ(10.43Mt、前年比+2.828%)
バングラデシュは気候条件が厳しい中でも安定成長を遂げており、じゃがいもは米や小麦と並ぶ重要な作物となっています。特に都市周辺での栽培拡大が目立ちます。
生産に影響を与える問題と課題
気候変動と異常気象
高温や干ばつ、豪雨などの異常気象は、じゃがいもの収穫に直接的な打撃を与えます。今後、干ばつ耐性や病害虫耐性のある品種の開発が急務です。
農業労働力の不足
世界的に農業従事者の高齢化と若年層の離農が進んでおり、収穫・管理作業における人手不足が問題となっています。
土壌劣化と農地の減少
特に集約的な農業が行われている地域では、土壌の疲弊や農地の都市化による縮小も懸念されます。
今後の展望と持続可能な発展への道筋
技術革新の活用
AI・IoTによる栽培管理の最適化やドローンによる病害モニタリングなど、精密農業の導入が生産性向上の鍵を握ります。
国際連携と品種改良
食料安全保障の観点から、国際的な種子バンクや品種共有プロジェクトの推進が不可欠です。収量が高く、病気に強い品種のグローバルな利用が求められます。
市場需要の変化と加工用需要の増加
都市化や中間所得層の拡大により、フライドポテトやポテトチップスなどの加工用じゃがいもの需要が伸びています。この変化に対応した流通・冷蔵インフラ整備が必要です。
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