2025年4月時点での日本の世帯保険支出は平均22,440円で、東北や北陸など地方で特に高く、大都市や中都市は相対的に低水準です。支出額は全体的に減少傾向にある一方で、保険を利用した世帯の割合は全国平均で5.197%、前年比で+15.66%と大きく増加しています。これは不安定な社会情勢や将来の医療・生活保障に備えた意識の高まりを反映しており、今後はさらに多様化・個別化された保険商品への需要が見込まれます。
家計調査結果
保険の相場
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 東北 | 北陸 | 小都市B | 近畿 | 東海 | 小都市A | 九州・沖縄 | 全国 | 大都市 | 中都市 |
最新値[円] | 22440 | 28530 | 27630 | 26360 | 25630 | 23160 | 22820 | 22650 | 22540 | 21910 | 21680 |
前年同月比[%] | -3.088 | +5.281 | -14.49 | +10.19 | +31.71 | -16.77 | -11.05 | -19.11 | -3.02 | -2.21 | -3.02 |
保険支出の世帯割合
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 関東 | 九州・沖縄 | 大都市 | 近畿 | 中都市 | 全国 | 小都市A | 東海 | 北海道 | 北陸 |
最新値[%] | 5.197 | 6.39 | 6.22 | 6.15 | 6.13 | 5.99 | 5.65 | 5.26 | 4.88 | 4.68 | 4.6 |
前年同月比[%] | +15.66 | +9.418 | +34.34 | +6.586 | +18.8 | +21.26 | +13.68 | +12.88 | +1.879 | -1.474 | +35.69 |
保険の推移


詳細なデータとグラフ
保険の診療代・入院費現状と今後
日本において保険は、医療や老後、災害など将来の不確実性に備える重要な経済的ツールです。近年、経済的不安や社会制度への信頼低下、自然災害や感染症への懸念が続く中、世帯ごとの保険加入行動が注目されています。2020年11月から2025年4月のデータは、家計における保険支出の地域差や変化を通じて、生活者の不安や期待の実像を浮かび上がらせています。
最新の保険支出 ― 地域差に注目
2025年4月時点の保険支出の全国平均は22,440円ですが、最も高いのは東北(28,530円)、次いで北陸(27,630円)、小都市B(26,360円)と続き、いずれも全国平均を大きく上回っています。これに対し、大都市(21,910円)や中都市(21,680円)は平均を下回り、都市部と地方で保険支出に顕著な違いが見られます。
この差には複数の要因が考えられます。地方では病院などへのアクセスに不安があるため、民間保険による「備え」が重視される1方、都市部では公的制度や自助努力による保障が相対的に充実していると感じられている可能性があります。
支出額の変動 ― 増加と減少が交錯する背景
前年同月比で見ると、全国平均で-3.088%と保険支出は減少していますが、地域ごとの動きは複雑です。近畿(+31.71%)や小都市B(+10.19%)では大幅に増加している1方で、9州・沖縄(-19.11%)、東海(-16.77%)、北陸(-14.49%)などでは大きく減少しています。
この背景には、生活費の圧迫による保険解約・減額といった節約行動や、契約更新時期のずれによる変動、保険料の引き上げや新商品の影響があると考えられます。また、近畿の大幅増は、老後不安や災害対策に対する保険加入の急増が影響している可能性もあります。
保険利用世帯の割合 ― 顕著な増加傾向
保険に支出した世帯の割合は全国平均で5.197%、前年比で+15.66%と大きく上昇しています。特に4国(+49.16%)、中国(+31.19%)、北陸(+35.69%)などで顕著な伸びが見られます。これは将来への備えに対する意識の高まりや、保険加入の促進活動が影響していると推測されます。
1方、東北では保険支出は全国で最も高いにもかかわらず、世帯割合は3.8%と最も低く、富裕層など1部世帯の高額加入に偏っている構造が見えます。このように、保険の「広がり」と「集中」が地域により異なることは、今後の保険制度設計においても考慮すべき課題です。
これまでの保険支出の傾向と課題
この5年間で見ると、全体として保険支出額には波がありつつも、利用世帯の割合は着実に上昇傾向にあります。これは、新型コロナウイルスの影響を受けた社会不安の増大と、それに伴うリスクへの関心が影響しています。
1方で、課題としては次のような点が挙げられます:
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情報格差:保険商品は複雑化しており、高齢者や若年層で適切な選択ができていないケースもあります。
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コストと保障のミスマッチ:高額な保険料に対して実際の給付額が見合わないという不満も存在します。
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地域間格差:支出金額や世帯比率の地域差は、医療インフラの違いや保険文化の浸透度の差を反映しています。
今後の保険の推移と期待される方向性
将来的には、次のような動きが予測されます:
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保険商品の細分化と個別対応化:疾病ごとの特化型保険や、働けないリスクを補償する就労不能保険など、多様なニーズに応える商品が拡大するでしょう。
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デジタル化とサブスクリプション型保険:スマートフォン経由で加入・管理できる手軽な保険が増え、若年層の加入を促進する動きが見込まれます。
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中間所得層への支援政策:公的保険と民間保険の「隙間」を埋める施策が必要とされ、中間層が安心して備えられる環境整備が進められる可能性があります。
さらに、教育面での保険リテラシー向上も重要です。保険は「損得」でなく「備え」の視点で捉える文化づくりが、今後の安定した家計形成に不可欠です。
まとめ
日本の保険支出は、金額・利用割合ともに地域によって大きな違いがありますが、全体として保険への関心は高まっています。支出の減少傾向と世帯比率の増加という2重の現象は、経済的不安の中で「最低限の備え」にシフトしていることを示しています。
今後は、より柔軟で分かりやすい保険商品と、安心して選べる環境整備が求められます。保険は単なる支出ではなく、生活の安心と未来のリスクに備える「投資」であるという意識が、今後の日本の家計における重要な価値観になるでしょう。
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