2025年3月時点の家計調査によると、全国の世帯(二人以上)における平均人員数は2.88人で、都市ごとに大きな差が見られる。川崎市や新潟市などは3.2人以上と多人数世帯が多く、逆に長野市や富山市では2.7人未満にとどまる。この背景には、子育て世代の集積、単身高齢世帯の増加、地理的・経済的要因がある。世帯人員数の長期的傾向としては少人数化が進行しており、今後も高齢化と未婚率の上昇が影響を与えると予想される。
世帯人員数の家計調査結果
世帯人員数の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 川崎市 | 新潟市 | 山形市 | 鳥取市 | 岡山市 | 松山市 | 高知市 | 福岡市 | 福井市 | 高松市 |
最新値[人] | 2.88 | 3.28 | 3.26 | 3.25 | 3.24 | 3.07 | 3.06 | 3.05 | 3.03 | 3.03 | 3.02 |
前年月同比[%] | -0.346 | +16.31 | +12.41 | +0.309 | +1.25 | +0.327 | +8.511 | +8.929 | +7.447 | +4.124 | +10.22 |
世帯人員数の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 長野市 | 甲府市 | 長崎市 | 富山市 | 神戸市 | 宇都宮市 | 徳島市 | 水戸市 | 奈良市 | 和歌山市 |
最新値[人] | 2.88 | 2.64 | 2.69 | 2.69 | 2.7 | 2.7 | 2.71 | 2.71 | 2.72 | 2.74 | 2.75 |
前年月同比[%] | -0.346 | -7.692 | -5.944 | -8.784 | +1.887 | -6.552 | -5.903 | -9.03 | -1.439 | +2.612 |
これまでの世帯人員数の推移


詳細なデータとグラフ
世帯人員数の現状と今後
世帯人員数は、同一世帯内で生活を共にする人数を指す。二人以上の世帯に限定したこの統計は、単身世帯を除いた家族構成の現実を反映しており、家計、消費動向、地域社会の性質までをも浮き彫りにする重要な指標である。とくに、出生率や高齢化の進展、都市部への人口集中といった日本社会の構造変化が、世帯人員数に如実に現れる。
世帯人員数の全国平均と上位都市の特徴
2025年3月時点の全国平均は2.88人。これに対し、川崎市(3.28人)、新潟市(3.26人)、山形市(3.25人)などが上位を占めている。これらの都市に共通するのは以下のような要素である:
-
郊外・住宅地型都市:川崎市は東京近郊に位置し、比較的若年の子育て世代が多い。これが高い人員数に寄与。
-
地方中核都市での多世代同居:新潟市や山形市、鳥取市では、三世代世帯が残る地域も多く、家族構成が多人数になりやすい。
-
生活コストの低さ:比較的住居費が安く、広い住宅を確保しやすいことも、家族が分散せず一緒に住む要因になる。
特筆すべきは、前年同期比での大幅な増加。川崎市(+16.31%)や新潟市(+12.41%)などは、住環境や保育政策の影響で子育て世帯が流入している可能性が高い。
世帯人員数が少ない都市の特徴
一方で、長野市(2.64人)、甲府市(2.69人)、長崎市(2.69人)などでは少人数世帯化が顕著だ。これらに共通する背景は次の通り:
-
高齢化率の高さ:長野市や富山市では、単身高齢者世帯や夫婦のみの高齢世帯が多い。
-
若年層の流出:都市圏への就職・進学によって、若者が流出し、親世代だけが残る構造。
-
出生率の低迷:子育て世代の割合が減少しており、結果として世帯人数が減っている。
特に水戸市(-9.03%)、富山市(-8.784%)、長野市(-7.692%)などは1年で急速に減少しており、地域経済や人口構成の深刻な変化を反映しているといえる。
都市間格差の要因
都市ごとの世帯人員数の差は、単なる人口規模や世帯数ではなく、以下のような多層的要因によって形成されている。
-
就業構造と転入出動向:都市部では若年単身者が多く、結婚や出産後に郊外へ転出する傾向がある。
-
住宅政策と住環境:郊外・地方都市では持ち家率が高く、広い住宅が確保しやすいため多人数世帯が維持されやすい。
-
地域文化と家族観:多世代同居の文化が根強い地域と、早期に独立する風土の違いも見逃せない。
今後の予測と政策課題
長期的には、全国的に世帯人員数の減少傾向が続くと見られる。未婚率の上昇、晩婚化、出生率の低迷、さらには老老世帯の増加がその主因である。
今後の予測:
-
2030年までに全国平均は2.7人を下回る可能性がある。
-
地方都市では高齢単身世帯の割合が4割近くになる恐れ。
-
子育て世帯の都市間移動によって、一部の都市では一時的に増加することもあるが、全体としては減少が続く。
政策課題:
-
高齢者単身世帯への支援強化(住居・介護・生活支援)
-
子育て世帯への移住支援(住環境整備、保育・教育インフラ)
-
地方での雇用創出による若年層の定着促進
結語:世帯人員数は「暮らしの輪郭」
世帯人員数は、家族のあり方だけでなく、社会全体の構造や地域の将来像を写す鏡である。今後の日本においては、家族の小規模化が進む中で、いかに「つながり」や「支え合い」を制度や地域社会が補完していくかが問われる時代になるだろう。都市ごとの差異に注目しながら、それぞれの地域の課題に即した政策的対応が求められる。
コメント