2021年から2025年にかけての腕時計の月間支出は、年齢層ごとに明確な特徴を見せている。支出額が最も高いのは40〜44歳の555円で、続いて65〜69歳、60〜69歳と続く。特に60代の支出が全体的に増加しており、高齢層の時計需要が回復傾向にある。一方、45〜54歳の層では大幅な支出減がみられ、中高年層での価値観の断絶が浮き彫りになった。今後は健康管理機能付きのスマートウォッチや記念品需要が鍵を握るだろう。
年齢別の腕時計
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 40~44歳 | 65~69歳 | 60~69歳 | 40~49歳 | 60~64歳 | 45~49歳 | 35~44歳 | 55~64歳 | 45~54歳 | 65~74歳 |
最新値[円] | 247.3 | 555 | 487 | 469 | 457 | 449 | 383 | 365 | 362 | 319 | 315 |
前年月同比[%] | -48.01 | 58.57 | 75.81 | 84.65 | -20.24 | 97.8 | -48.03 | 33.7 | -12.98 | -48.88 | 21.62 |
これまでの年齢別の推移


詳細なデータとグラフ
年齢別の現状と今後
2025年3月時点のデータによると、1世帯あたりの腕時計月間支出の平均は247.3円と控えめだが、年齢別にみると顕著な差異が現れている。最も高い支出を記録したのは40〜44歳の555円で、次いで65〜69歳(487円)や60〜69歳(469円)と続き、働き盛り世代と退職前後の高齢層の消費が活発であることがわかる。
年代ごとの支出動向とその背景
40〜44歳:実用性とステータスの両立
この層は仕事でも私生活でも活発な時期にあり、腕時計が「自己表現」として重要視される。昇進祝いや転職を機に高品質な時計を購入する層も多く、前年比58.57%増というデータがその傾向を裏付ける。また、子育て期において贈り物としての時計購入もある。
60〜69歳:回復するシニア需要
この世代では、60〜64歳で449円(前年比97.8%増)、65〜69歳で487円(同75.81%増)と大幅な増加が目立つ。退職後の記念購入、自分へのご褒美、終活的な意味合いを込めた「長く使える1本」の需要が要因だと考えられる。加えて、スマートウォッチの健康管理機能への関心も強まっている。
45〜54歳:消費の谷間と購買の停滞
この中年層は、45〜49歳(383円、前年比-48.03%)および45〜54歳(319円、-48.88%)といずれも大幅なマイナス。子どもの教育費や住宅ローンなど負担の大きな時期と重なり、時計購入の優先順位が下がっている。また、腕時計に対する価値観が相対的に希薄な「実用品消費層」としての特徴もある。
35〜44歳:次世代消費の萌芽
若年中堅層の35〜44歳は365円、前年比33.7%増と比較的堅調。ファッションアイテムとしての腕時計や、スマートウォッチとの共存が消費を支えている。この層はブランド志向が強いわけではないが、「デザイン性×価格」のバランスを見て購買する傾向がある。
55〜64歳:二極化の前触れ
この層は362円で前年比-12.98%とやや減少。高級時計への関心が薄れ、すでに所有しているため新規購入の必要性が低い可能性がある。全体としては支出が減る中、一部では富裕層的な購買があるなど、価値観の二極化が進んでいる。
腕時計の役割の変化とスマートウォッチの影響
過去の腕時計は「時間を知る道具」であったが、今やその役割はスマートフォンが担っている。腕時計はファッション、趣味、ステータスの象徴、あるいはヘルスケアツール(スマートウォッチ)へと進化している。特に60代以上ではスマートウォッチの心拍数・歩数計測機能が人気で、健康志向の強まりが購買を後押ししている。
一方、45〜54歳のような「はざまの世代」では、スマート機能への関心もブランド志向も薄く、支出が停滞している。
今後の予測と世代別の購買傾向の深化
40代層
今後も仕事やライフイベントに関連した腕時計購買が続き、支出は高止まりする可能性がある。特にスマートウォッチと伝統的腕時計の「二本持ち」志向が広がる。
60代層
健康管理機能の拡充がスマートウォッチ市場を刺激し、支出は引き続き堅調。プレゼントや「人生の記念」としての時計需要も持続するとみられる。
45〜54歳層
当面は支出の冷え込みが続くと予測されるが、子育て・教育費負担の終了とともに回復基調に転じる可能性もある。ただし、消費再開には新しい価値提案(軽量、長寿命、付加機能)が必要だろう。
若年層(35歳以下)
Z世代以下では、ファッション志向とガジェット志向が共存するが、価格に敏感なため1万円以下の廉価スマートウォッチやファッション時計が中心となるだろう。
まとめと提言
腕時計の月間支出は、年齢によって明確な違いを見せている。40代と60代が支出の両翼を担う一方、45〜54歳の「中間層」は消費が冷え込む特異な構造が存在する。今後、腕時計市場は単なる嗜好品ではなく、「人生の節目」と「健康管理」を支えるパーソナルアイテムとしての再定義が必要である。
マーケティング戦略としては、各年代のライフスタイルに沿った提案が鍵となるだろう。たとえば、40代には“ビジネスシーンで映える時計”、60代には“健康を見守るスマートウォッチ”といった具合に、年齢ごとの価値軸を正確に捉えることが重要である。
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