不動産業の時給動向|女性とパート層に見られる賃上げの兆しとは

各産業

不動産業の時給は2498円で前年比+1.5%。男性は高水準だが伸び悩み、女性・パート層の賃金上昇が顕著。インセンティブ重視の業界特性から表面的な時給上昇は緩やかで、今後は処遇の多様化と男女格差是正が鍵となる。

男女別の時給の推移

最近の時給データ

合計 男性計 一般労働者 女性計 パートタイム労働者
最新 2025年4月 2025年4月 2025年4月 2025年4月 2025年4月
最大期 2024年12月 2024年12月 2024年12月 2024年12月 2024年12月
最新値[円/時間] 2369 2585 2507 1990 1371
最大値[円/時間] 5323 5994 5801 4034 1481
前年同月比[%] +4.592 +3.441 +4.458 +9.221 +9.156

不動産業の時給の推移

時給の推移
最新のデータ

詳細なデータとグラフ

日本の全産業の労働者数の特徴

不動産業は、住宅やオフィス、商業施設の売買・賃貸を中心とした産業で、地域経済や個人の生活基盤と密接に関わっています。営業・管理・事務など多様な職種が存在し、固定給+成果報酬制の賃金体系が特徴的です。本稿では、最新の時給データから、不動産業の雇用実態と将来展望を探ります。


業界全体の時給水準と動向

  • 平均時給:2498円(前年比 +1.503%)

不動産業の時給は全産業の中では中程度の水準です。前年比の伸びは+1.5%と緩やかな上昇にとどまり、これは安定収益が見込める1方で、インセンティブ型報酬が時給に反映されにくい構造が背景にあります。


雇用形態別の時給と課題

1般労働者(正社員等)

  • 2662円(前年比 +1.371%)

正社員の時給は比較的高水準ですが、前年比の伸びが+1.3%と最も低い点に注目です。これは、固定給部分が大きく変動しにくく、インセンティブ(歩合)部分が統計に反映されにくいため、表面上の時給上昇が抑制されています。

パートタイム労働者

  • 1345円(前年比 +5.408%)

パート層では前年比+5.4%と大幅な上昇が見られます。これは、物件管理・来客対応・事務支援などの実務ニーズの増加と、深刻な人手不足による時給競争が要因です。今後もこの傾向は続くと予想されます。


男女別の時給と特徴

男性労働者

  • 2764円(前年比 +1.506%)

営業職や管理職など高収入ポジションが男性に偏在していることから、全体で最も高い水準ですが、伸び率は1.5%と低調です。これも固定給の安定性が影響しており、賃金変動性の低さが現れています。

女性労働者

  • 2028円(前年比 +3.101%)

女性の時給は男性より約700円低いですが、前年比+3.1%と比較的高い伸びを示しています。これは、パート層の賃上げや女性社員の業務拡大(事務から営業補助まで)が背景にあり、男女格差の縮小が徐々に進行していると評価できます。


業界特有の課題と構造的問題

成果主義と賃金統計のズレ

不動産業はインセンティブ重視の業界であるため、実際の報酬総額は統計に表れにくく、表面的な時給の上昇率が抑えられやすいです。このため、実感値と統計値が乖離する傾向があります。

雇用の2極化

正社員とパートで業務内容・責任範囲・待遇が大きく異なるため、同1産業内での格差が顕著です。特にパート層の業務拡大が進む中で、適切なスキル評価と賃金体系の見直しが求められます。

女性比率とキャリア構築の壁

不動産業は依然として男性主導型の業務構造が色濃く残っており、女性の管理職登用や営業職配置の機会は限定的です。育成・登用の支援体制を整備することで、業界全体の人材多様化が促進される可能性があります。


今後の展望と予測

賃金上昇は緩やかに継続

全体的な賃金は引き続き1〜2%台の緩やかな上昇を継続すると見られます。急激な上昇は見込めませんが、賃金の底上げや業務の専門化により、職種別のメリハリが強まる可能性があります。

パート層の処遇改善が進む

パートタイム労働者の業務が多様化しており、待遇改善とスキルアップ支援が重要課題です。今後は、簡易な物件対応業務からIT対応・接客の質向上へと進化する中で、さらなる賃上げが期待されます。

ジェンダー平等と人材多様化の推進

女性の時給上昇率が高い背景には、人手不足と業務の再編成があります。今後は、柔軟な働き方・キャリア育成支援・成果評価の公正化を進めることで、男女格差のさらなる縮小と業界全体の生産性向上が見込まれます。


まとめ

不動産業の時給は2025年1月時点で平均2498円と安定的だが伸びは緩やかです。パート層・女性労働者の賃金上昇が目立つ1方で、正社員の伸びは限定的です。今後は、成果主義と統計値の差異を是正し、雇用の多様性と公平性を高める改革が求められます。

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