日本のフキ栽培は2002年以降縮小傾向にあり、2023年の作付面積は0.391千ha。群馬・愛知が主要産地だが、いずれも前年比で減少。高齢化、需要の減少、機械化困難などが課題。今後は加工需要や地場連携、ブランド化などでの再構築が期待される。
野菜栽培のデータとグラフ
フキ収穫量の最大と最新
全国 | 群馬 | 愛知 | 秋田 | 長野 | 北海道 | 徳島 | 愛媛 | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2004年 | 2002年 | 2002年 | 2004年 | 2004年 | 2021年 | 2003年 | 2004年 |
最新値[kha] | 0.391 | 0.071 | 0.052 | 0.03 | 0.021 | 0.02 | 0.019 | 0.016 |
最大値[kha] | 0.867 | 0.155 | 0.129 | 0.048 | 0.046 | 0.024 | 0.043 | 0.035 |
前年比[%] | -6.683 | -13.41 | -7.143 | 0 | 0 | -9.091 | 0 | 0 |
全体比[%] | 100 | 18.16 | 13.3 | 7.673 | 5.371 | 5.115 | 4.859 | 4.092 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
フキについての推移と展望
フキ(蕗)は日本原産の多年生の葉茎野菜で、古くから春の味覚として親しまれてきました。独特の香りとほろ苦さを持ち、煮物や佃煮など和食に欠かせない食材です。また、全国に自生する山菜としても知られていますが、流通量の多くは畑で栽培された「フキ栽培品種(例:愛知早生)」が占めています。
全国のフキ栽培の動向(2002〜2023年)
2002年から2023年にかけて、日本のフキ栽培面積は大きく減少してきました。2023年の作付面積は0.391千haで、前年比-6.683%と大幅に減少しています。これは以下のような背景があると考えられます:
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消費者の嗜好変化(和食離れ)
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調理の手間が敬遠され、需要減少
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生産者の高齢化・後継者不足
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利益率が低く、他作物への転換
フキは加工用(惣菜や業務用)の比率が高いものの、機械化が難しく、手間の割に収益が限られるため、栽培の継続が難しくなっています。
主要産地の県別特徴と動向
群馬県(0.071kha、全国比18.16%、前年比-13.41%)
群馬県は関東におけるフキ栽培の中心地で、特に「水煮用加工向け」の供給に強みを持ちます。しかし2023年は前年比13%以上の減少と、かなりの落ち込みを見せました。中山間地の高齢化や人手不足が影響していると考えられます。
愛知県(0.052kha、全国比13.3%、前年比-7.14%)
伝統的に「愛知早生」という栽培品種で知られ、早出し出荷が可能な産地です。大都市圏への供給にも適していますが、2023年は減少傾向にあり、地元消費の減退も影響しています。
秋田県(0.03kha、全国比7.673%、前年比不明)
秋田ではフキは山菜文化の一部として根づいており、特に地場消費や直売所向けに栽培されます。規模は小さいながらも、品質の高いフキを供給しており、地産地消型のモデルといえます。
長野県(0.021kha、全国比5.371%)
冷涼な高原地域を活かし、夏季に向けたフキ栽培が行われています。作付面積は減少傾向にありますが、漬物用など用途の多様性があります。
北海道(0.02kha、全国比5.115%、前年比-9.091%)
短い夏を活かした栽培が行われますが、2023年は前年比-9%と大きく減少しました。労働力不足や他の収益性の高い作物への転換が一因です。
徳島県(0.019kha、全国比4.859%)
温暖な気候を活かし、早期出荷が可能な産地です。需要期に合わせた栽培技術がありますが、農業全体の担い手不足に悩まされています。
愛媛県(0.016kha、全国比4.092%)
フキの加工品原料としての出荷が主であり、規模は小さいものの安定した生産が続いています。高齢農家の割合が多く、将来的な維持が課題です。
フキ栽培を取り巻く課題
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市場需要の減退若年層を中心に和食の頻度が減り、フキのような下処理の手間がかかる食材の需要が縮小しています。
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人手不足と高齢化フキは収穫・皮むき・出荷などに多くの労力を要するため、高齢化とともに離農が進んでいます。
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機械化の難しさ繊細な作物であるため、大規模機械化による省力化が難しく、作業時間に対して収益が見合いにくい現状があります。
今後の展望と持続可能な方向性
① 加工需要との連携強化
近年は惣菜、冷凍食品、業務用向けにフキの需要が残っています。これに特化した契約栽培の形を強化することで、規模を維持できる可能性があります。
② ブランド化と地域資源化
「山菜文化」や「春の味覚」としてのイメージを再活用し、地域ブランド化・観光との連携(例:フキの収穫体験ツアー)などが期待されます。
③ 新たな品種やスマート農業の導入
省力・高収量品種の育成や、農業ICT技術によるモニタリングで、生産効率の改善が求められます。とはいえ、技術導入に対応できる若手農家の育成が急務です。
④ 地場消費の再強化
フキは保存食や佃煮などにも向くため、地域の学校給食や道の駅との連携により、地元需要を育てる戦略が現実的です。
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