ビール1パックの価格推移と地域差、今後の値上げ動向を徹底解説

ビール



2025年4月時点でのビール1パック(350mL×6)の平均価格は1181円で、前年同月比+4.48%と上昇。和歌山や富山などで1300円超となる一方、熊谷や富士では1100円前後と地域差が顕著。酒税改革・原材料費の高騰・流通コスト増が価格上昇の要因で、今後も年2〜3%程度の上昇と市場の多極化が進む見込み。

小売物価統計

ビール小売りの高い都市

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 和歌山 富山 八王子 神戸 宮崎 福山 静岡 松阪 大阪 長崎
最新値[円] 1181 1309 1264 1259 1252 1248 1246 1236 1234 1234 1230
前年同月比[%] +4.482 +9.631 +13.16 +10.25 +8.681 +7.216 +9.78 +8.516 +8.151 +6.105 +6.309

ビール小売りの安い都市

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 熊谷 富士 さいたま 青森 大津 金沢 鹿児島 浦安 函館 伊丹
最新値[円] 1181 1055 1100 1114 1115 1119 1123 1125 1127 1134 1138
前年同月比[%] +4.482 -5.888 -0.812 -0.358 +0.996 -2.865 +2.37 +3.306 +0.535 +0.98 -3.396

 

ビールの推移

ビール小売り価格
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

ビールの現状と今後

日本国内における350mL缶ビール6本入りパックの小売価格は、2025年4月時点で全国平均1181円に達しています。これは前年同月比で+4.482%という比較的大きな上昇であり、ここ10年でビール価格が確実に右肩上がりとなっていることを示しています。

価格上位地域では和歌山(1309円)、富山(1264円)、8王子(1259円)などが並び、逆に下位には熊谷(1055円)、富士(1100円)、さいたま(1114円)などがあります。この地域差は後述する「流通構造」「競合の有無」「税制」「消費行動」の違いを反映しています。


地域別価格差の背景──なぜこれほど差があるのか?

高価格帯地域の特徴

和歌山・富山・神戸など高価格地域では、地場流通網の限界や地元ブランド志向の強さ、あるいは観光地価格の影響が考えられます。特に富山の前年比+13.16%8王子の+10.25%という急激な値上がりは、特定の銘柄の価格上昇や流通コストの上昇が直接反映されたものと推測されます。

低価格帯地域の特徴

熊谷(1055円)、富士、さいたまなどでは、逆にマイナス成長すら見られます。熊谷の-5.888%という値下がりは特異で、過剰在庫や販促キャンペーン、あるいはPB商品との価格競争の激化などが影響している可能性があります。これらの地域では大型スーパーやドラッグストアが価格主導権を持っていると考えられます。


価格変動の主因──税制度・コスト・需要構造

ビールの小売価格を押し上げている主要因は以下の3つです。

  1. 酒税の段階的改正 日本では2020年以降、段階的に酒税制度が見直され、2026年には「ビール類税率の統1」が予定されています。これにより「発泡酒」や「第3のビール」との価格差が縮まり、本物のビールに回帰する動きが生まれつつあります。

  2. 物流・製造コストの上昇 原材料(麦芽・ホップ)や缶・段ボールなどの資材価格が高騰。さらに人件費やエネルギーコストの上昇、トラック運転手不足による物流費の増加が重なっています。

  3. 人口減少と飲酒習慣の変化 若者を中心にアルコール離れが進んでおり、全体の需要が減少する中で、利益確保のための単価引き上げが企業にとって不可避となっています。


流通と小売戦略──PB商品の影響とスーパー主導価格

1パック6缶という販売単位は、大手スーパーやディスカウントストアの売上構造にとって極めて重要です。とくにPB(プライベートブランド)商品や地域限定価格戦略が影響を及ぼしています。

また、値上げ局面では「まとめ買い促進」や「容量変更による価格維持」など、企業による価格転嫁の工夫も見られます。こうした施策が、各地域の小売価格にバラつきをもたらす要因となっています。


今後の価格推移の見通し

2026年の酒税改正の影響

ビール類の税率統1(現在はビールが最も高税率)によって、現在のビール価格に含まれる税金部分が引き下げられる見通しがあります。しかし、これは「実質的な値下げ」には直結しないと見られています。なぜなら、その分を原材料費や物流費の上昇分に充当する可能性が高いからです。

長期的にはゆるやかな上昇傾向

全体として、年2〜3%程度の緩やかな価格上昇が続くと考えられます。地域差も維持される傾向にあり、1300円を超える地域と1100円前後に抑える地域の2極化が進行するでしょう。

消費者の選好の変化

「糖質ゼロ」「クラフトビール志向」「海外ブランド志向」など、ニーズの多様化により、平均価格が徐々に押し上げられる傾向も見られます。高単価商品が売上の中心になることが、結果的に「パック価格の引き上げ」へとつながります。


まとめ──ビールの価格はどこへ向かうのか

日本のビール1パック価格は、構造的なコスト上昇と税制改革、そして消費者の価値観の変化を背景に、今後もゆるやかな上昇が見込まれます。1方で、販路や地域によっては競争激化による値下がりも局所的に見られ、「多極化するビール市場」と呼ぶべき様相を呈しています。

メーカーにとっては、「安さ」で勝負する時代から「ブランド力と差別化」で支持を得る時代へと移行しており、地域差・銘柄差を超えた長期的な戦略が求められています。

 

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