クレジット純減の地域差と傾向を徹底分析:世代間・今後の予測も

借入(勤労世帯)



2025年3月時点の家計調査における勤労世帯のクレジット純減(支出超過)は全国平均で-5.494万円となり、札幌市や新潟市では大幅な増加(返済超過)が見られる一方、富山市や千葉市などでは大きな純減(借入超過)となっている。こうした地域差の背景には、物価や所得水準、ライフスタイル、年齢層の違いなどがあり、将来的には高齢化とインフレ進行の中で返済余力が都市・世代ごとにさらに二極化する可能性がある。

クレジット純減の家計調査結果

クレジット純減の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 札幌市 新潟市 那覇市 佐賀市 福島市 徳島市 津市 静岡市 鳥取市 相模原市
最新値[万円] -5.494 6.148 2.58 2.324 1.733 0.569 0.389 -0.699 -0.718 -0.849 -0.907
前年月同比[%] +52.68 -269.5 -216.6 -194.9 -146.9 -123.3 -45.42 -95.09 -78.3 -73.73 -84.09

クレジット純減の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 富山市 千葉市 岡山市 金沢市 長崎市 福井市 横浜市 東京都区部 松江市 奈良市
最新値[万円] -5.494 -25.11 -17.09 -16.43 -13.6 -11.08 -10.9 -10.2 -9.202 -8.837 -8.62
前年月同比[%] +52.68 +406.8 +264.9 +188.5 +155.9 +232.1 +346.8 +386.3 -18.3 +6248 -30.48

 

これまでのクレジット純減の推移

クレジット純減の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

クレジット純減の現状と今後

「クレジット純減」とは、クレジットカードなどを用いた支出から、その月の返済額を差し引いたものである。プラスであれば返済超過(支払い額が利用額を上回る)、マイナスであれば借入超過(利用額が返済額を上回る)を意味する。つまり、クレジット純減がマイナスであればあるほど、その家計は“クレジット債務が積み上がっている”状態といえる。


全体的な動向と全国平均の変化

2020年から2025年までのデータで見ると、全国平均のクレジット純減は一貫してマイナスで推移し、直近では-5.494万円という数値を示している。これは多くの世帯がクレジットカードを利用しての“先延ばし消費”に依存していることを示唆している。

新型コロナ以降、キャッシュレス化の進展や物価上昇による可処分所得の圧迫が、この傾向を後押ししてきた。特にエネルギー価格や食料品の高騰が生活費のクレジット化を加速させている。


地域別の特徴とクレジット純減の大きい都市

クレジット純減が顕著に大きい都市(=借入超過が大きい都市)には、以下のような傾向が見られる:

  • 富山市(-25.11万円)圧倒的な純減額であり、前年同期比+406.8%という急増。高額商品のローン化、教育・医療費負担の増加が背景と考えられる。

  • 千葉市(-17.09万円)、岡山市(-16.43万円)首都圏または地方中核都市であり、生活コストが相対的に高い。高所得者層が多く消費も大きいため、借入額も膨らむ傾向にある。

  • 横浜市、東京都区部、金沢市など大都市であるがゆえに、生活の質を維持するために高額消費をカードに頼る構造が根強く、インフレの影響をもろに受けている。


クレジット純減が少ない・プラスの都市の特徴

一方で、クレジット純減が小さい、あるいは返済が上回っている都市には共通する特徴がある:

  • 札幌市(6.148万円)、新潟市(2.58万円)などの“返済超過都市”一見堅実に見えるが、前年同期比では-269.5%、-216.6%と急落しており、「一時的な返済ブームの終焉」や「生活費を抑えきれない高齢化社会の影」が見て取れる。

  • 那覇市、佐賀市、福島市など地方都市では比較的保守的な消費傾向があるが、インバウンドの回復や物価上昇の影響により、生活の持ち出しが増えてきている。


世代別傾向とクレジット利用の姿勢

若年層は現金に比べクレジットカードを積極的に利用し、支払いの後ろ倒し傾向が強い。また、ポイント還元制度やサブスク文化の浸透も、日常的なクレジット利用を後押ししている。一方、60代以上の高齢層では定期収入のない中で医療費や孫への支援などにクレジットを用いるケースが目立ち、返済余力が減少している。


今後の予測と懸念点

今後のクレジット純減は、以下のような構造的要因に左右される:

  • ① 金利の上昇リスク日銀の政策転換により、金利が上がればクレジットのリボ払い等の負担が増す可能性がある。

  • ② 高齢化と年金収入の限界高齢世帯がクレジット依存を強めると、債務返済不能リスクが拡大する。

  • ③ 消費行動の二極化都市部の高所得層による高額消費と、地方の生活困窮層の必要消費により、純減額の差はさらに拡大する。


政策的対応と家計教育の必要性

政府や地方自治体は、家計管理の啓発を強化する必要がある。特に若年層へのクレジット教育、高齢者への「リボ払い注意喚起」などが急務だ。また、信用情報の見える化や、家計相談窓口のオンライン化も効果的だろう。


まとめ

クレジット純減の傾向は、都市・世代・所得層の違いによって大きく左右される。特に今後は、インフレ圧力と高齢化が家計負担にのしかかり、クレジット利用と返済のバランスを保つことが難しくなると予想される。生活の質と債務の健全性を両立させるための家計管理力が、ますます重要になるだろう。

 

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