二人以上世帯のエンゲル係数の動向と都市・世代別の格差分析

食料



エンゲル係数は家計における食費の割合を示す指標で、2025年3月時点の全国平均は27.3%。浜松市や秋田市などでは30%を超える高水準となり、特に高齢者や低所得世帯が多い都市で上昇傾向が目立つ。一方、富山市や名古屋市などは20%未満にとどまり、地域間格差が大きい。今後は高齢化と物価上昇がさらなる上昇を招く可能性があり、支援策や構造改革が求められる。

エンゲル係数の家計調査結果

エンゲル係数の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 浜松市 和歌山市 秋田市 相模原市 大阪市 さいたま市 静岡市 那覇市 神戸市 福島市
最新値[%] 27.3 32.5 32.4 32.1 31.7 31.7 31.1 31 30.8 30.8 30.4
前年月同比[%] +5.069 +49.08 +17.39 +37.18 +13.62 +1.603 +30.67 +33.05 +10.39 +2.667 +9.747

エンゲル係数の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 富山市 名古屋市 鳥取市 堺市 津市 千葉市 甲府市 高松市 北九州市 山形市
最新値[%] 27.3 18 18.5 18.9 22.8 23.1 23.4 23.5 24.1 24.2 24.6
前年月同比[%] +5.069 -35.71 -31.23 -32.01 -7.317 +9.479 -13.97 -24.68 +3.433 -20.66 -8.209

 

これまでのエンゲル係数の推移

エンゲル係数の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

エンゲル係数の食料費現状と今後

エンゲル係数とは、家計支出のうち食料費が占める割合を示す指標であり、生活水準のバロメーターとして古くから用いられています。一般にこの数値が高いほど、生活の中で食費が重くのしかかっていることを意味し、所得水準が低い、あるいは物価が高騰している状況を反映する傾向があります。


2008年から2025年までの長期的推移

2008年以降、エンゲル係数は一貫して上昇傾向を示してきました。特に2014年以降の円安や食品の値上げ、消費増税の影響などにより、名目上の食料費は増加しており、可処分所得が停滞または減少する中で、エンゲル係数はジワジワと上がってきました。直近の2025年3月時点での全国平均は27.3%で、リーマン・ショック前と比べて明確な上昇が見られます。


都市間でのエンゲル係数の格差とその背景

高エンゲル係数の都市(浜松市、和歌山市、秋田市など)

浜松市(32.5%)や和歌山市(32.4%)、秋田市(32.1%)といった地方都市では、可処分所得が相対的に低いことに加え、食料自給率が高くない都市では輸送コストや物価の影響を受けやすい傾向があります。また、高齢者世帯の比率が高い都市も多く、年金収入など固定的で限られた所得の中で食費の割合が高くなりやすい状況が背景にあります。

低エンゲル係数の都市(富山市、名古屋市、鳥取市など)

一方、富山市(18.0%)、名古屋市(18.5%)、鳥取市(18.9%)などでは、地場産業による安定的な収入や食料自給力の高さが背景にあると考えられます。また、持ち家比率が高く住居費の圧力が低いため、他の支出に余裕があり、結果的にエンゲル係数が低く抑えられる傾向にあります。


世代間の違いとその影響

エンゲル係数の高さには世代構成も密接に関わっています。高齢者世帯では外出機会が少なく、外食が減る傾向にある一方で、健康志向から比較的高価な食品を選ぶ傾向もあり、食費の絶対額が変わらなくとも、総支出に占める割合が高くなりがちです。子育て世帯では教育費や住宅費が大きく、相対的に食費を抑えようとする工夫が多く見られ、エンゲル係数もやや低めになる傾向があります。


2025年以降の見通しと政策的課題

現在のインフレ傾向と実質賃金の停滞が続く場合、今後もエンゲル係数は上昇圧力を受けることが予想されます。特に高齢化が進行する地方都市では、医療・介護支出の増加とあわせて、他の消費が圧迫され、相対的に食費の割合が増えることで、エンゲル係数はさらに上昇する恐れがあります。

一方、都市部では共働き世帯の増加や宅配食材・外食サービスの充実によって、支出構造が変化しつつあり、エンゲル係数が相対的に安定するか、やや低下する可能性も見込まれます。


社会的・政策的対応の必要性

エンゲル係数の上昇は生活の「余裕のなさ」を反映する警告サインとも言えます。物価対策や低所得者層への食料支援、農産物流通の効率化によるコスト低減策などが求められます。また、都市ごとの実態を踏まえた地域別政策の導入も重要となります。

 

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