アジア経済の一人当たりGDP(購買力平価)の動向と今後の見通し

GDP

アジア地域の一人当たりGDP(購買力平価)は、高成長国と資源国が牽引する形で着実に上昇してきました。シンガポールやマカオ、台湾などは先進的産業構造や投資環境を背景に高水準を維持。一方で為替や人口構成の影響も大きく、今後は構造改革と格差是正が重要です。今後の推移はデジタル経済、労働生産性、地政学的安定が鍵を握ると予測されます。

一人当たりGDP(購買力平価)、現価格ランキング

2025年
降順昇順
名称最新値[万指数]前年比[%]
1シンガポール15.68+4.025
2マカオ13.4+4.699
3カタール12.16+4.607
4ブルネイ9.576+4.431
5台湾8.408+5.677
6アラブ首長国連邦8.168+5.942
7香港7.794+3.764
8バーレーン6.779+2.892
9韓国6.511+3.852
10サウジアラビア6.192+3.652
11イスラエル5.644+4.649
12日本5.468+3.727
13クウェート5.096+2.521
14マレーシア4.347+5.629
15トルコ4.245+4.813
16オマーン4.201+1.791
17モルディブ3.658+5.474
18中国2.898+6.958
19タイ2.632+4.411
20モンゴル2.045+7.681
21イラン1.996+1.946
22ブータン1.774+9.132
23インドネシア1.761+6.362
24ベトナム1.748+7.035
25イラク1.518-1.343
26フィリピン1.293+7.139
27インド1.213+8.053
28ヨルダン1.151+4.799
29バングラデシュ1.027+5.463
30ラオス1.012+3.865
31カンボジア0.865+5.711
32パキスタン0.695+3.366
33ミャンマー0.592+4.125
34ネパール0.572+5.604
35東ティモール0.492+3.983
36イエメン0.167-1.766
購買力平価、現価格

一人当たりGDP(購買力平価)、不変価格ランキング

2025年
降順昇順
名称最新値[万指数]前年比[%]
1シンガポール13.43+1.334
2マカオ11.49+1.99
3カタール10.42+1.9
4ブルネイ8.206+1.729
5台湾7.206+2.943
6アラブ首長国連邦7+3.201
7香港6.68+1.079
8バーレーン5.81+0.23
9韓国5.58+1.164
10サウジアラビア5.307+0.97
11イスラエル4.836+1.941
12日本4.686+1.043
13クウェート4.367-0.131
14マレーシア3.726+2.896
15トルコ3.638+2.1
16オマーン3.601-0.843
17モルディブ3.135+2.745
18中国2.483+4.191
19タイ2.256+1.709
20モンゴル1.752+4.895
21イラン1.71-0.692
22ブータン1.52+6.308
23インドネシア1.509+3.61
24ベトナム1.498+4.265
25イラク1.301-3.896
26フィリピン1.108+4.366
27インド1.04+5.257
28ヨルダン0.986+2.087
29バングラデシュ0.88+2.734
30ラオス0.868+1.177
31東ティモール0.744+2.097
32カンボジア0.741+2.976
33パキスタン0.596+0.691
34ミャンマー0.508+1.431
35ネパール0.49+2.871
36イエメン0.144-4.308
購買力平価、不変価格

詳細なデータとグラフ

一人当たりGDP(購買力平価)の現状と今後


アジアにおける過去の推移と構造的背景

1980年代からアジアの1人当たりGDP(PPP)は急速に上昇してきました。特に以下の3つの要素が影響しています:

  • 工業化・輸出主導成長(例:韓国、台湾)

  • 資源国の価格高騰(例:カタール、ブルネイ)

  • グローバル金融センター化(例:シンガポール、香港、マカオ)

この中でもシンガポールは高度な人材投資とインフラ整備、金融自由化を通じて、現在では15.68万PPPドルとアジア最高水準に到達しています。また、マカオやカタールは規模は小さいながらも観光・エネルギー分野の特化で突出した水準を記録しています。


直近の動向(2025年予測を中心に)

2025年の予測値に基づくと、上位の顔ぶれは以下の通りです:

国・地域 1人当たりGDP(PPP) 前年比増加率
シンガポール 15.68万 +4.025%
マカオ 13.4万 +4.699%
カタール 12.16万 +4.607%
ブルネイ 9.576万 +4.431%
台湾 8.408万 +5.677%
アラブ首長国連邦 8.168万 +5.942%
香港 7.794万 +3.764%
バーレーン 6.779万 +2.892%
韓国 6.511万 +3.852%
サウジアラビア 6.192万 +3.652%

注目すべき点は、全体として堅調な増加傾向にあることです。特に台湾とUAEの伸びが著しく、技術主導型経済への移行やエネルギー価格の安定が影響しています。1方、韓国は増加率が鈍化傾向にありますが、依然として安定した高水準を維持しています。


1人当たりGDP(PPP)の問題点と課題

PPPベースのGDPは物価差を考慮する点で有用ですが、以下のような課題もあります:

  • 国内格差を反映しない:1人当たりという平均値は、高所得層に引き上げられる傾向があり、格差の大きい国では実態を正確に反映しない。

  • 非市場活動の無視:家事労働やインフォーマル経済の貢献はカウントされず、特にアジアの発展途上国では過少評価につながる。

  • 為替政策や補助金の影響:1部の国では政府の価格統制があるため、実際の購買力とずれが生じる可能性がある。


今後の見通しと注目の要因

今後のアジアにおける1人当たりGDP(PPP)の推移には以下の要因が大きな影響を与えると考えられます:

デジタル経済の成長

インド、ベトナム、インドネシアなどがIT・スタートアップ産業を強化することで中長期的な伸びが期待されます。

人口構造と労働力問題

少子高齢化が進む日本・韓国・台湾では、1人当たりGDPは短期的には保たれるものの、労働供給の減少が成長率を抑制する可能性があります。

地政学的リスク

台湾海峡問題、中東情勢、米中関係などが、投資や生産ネットワークに影響を与えるため、特に高いGDPを維持する国々にとっては重要なリスク要因です。

再分配と教育投資の強化

今後は単なるGDP成長だけでなく、格差縮小・教育レベルの底上げが質の高い経済成長に不可欠です。


まとめ

アジア経済における1人当たりGDP(PPP)は、物価を考慮した現実的な生活水準の指標として非常に有用です。シンガポールやマカオ、カタールといった高水準国は先進的な経済構造と人口規模の小ささを背景に高い指標を維持していますが、今後はより持続的・包摂的な成長への転換が求められます。購買力の成長はアジアの競争力の源泉であり続けるものの、その質と公平性が問われる時代へと進んでいます。

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