日本のみかん1kgの平均小売価格は2025年3月に1151円に達し、過去15年で最高水準となった。富山や八王子などでは1300円を超え、高知では前年比60%以上の高騰を記録。一方、静岡や盛岡などでは比較的安価だが急激な上昇傾向が見られる。価格上昇の背景には、気候変動、生産者の高齢化、物流コストの増加、健康志向による需要増などがある。今後も高値傾向が続くとみられ、持続可能な流通と生産体制が課題となっている。
食料品の都市別小売価格
みかんの高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 富山 | 松阪 | 八王子 | 前橋 | 長岡 | 高知 | 金沢 | 宇都宮 | 名古屋 | 岐阜 |
最新値[円] | 1151 | 1398 | 1390 | 1375 | 1374 | 1348 | 1331 | 1331 | 1330 | 1318 | 1317 |
平均比[%] | 100 | 121.4 | 120.7 | 119.4 | 119.3 | 117.1 | 115.6 | 115.6 | 115.5 | 114.5 | 114.4 |
前年月同比[%] | 22.86 | 33.52 | 21.82 | 36.68 | 35.1 | 30.62 | 60.55 | 40.4 | 10.19 | 16.23 | 26.27 |
みかんの低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 盛岡 | 静岡 | 福山 | 佐賀 | 山口 | 徳島 | 佐世保 | 水戸 | 東大阪 | 高松 |
最新値[円] | 1151 | 634 | 826 | 876 | 902 | 918 | 928 | 940 | 948 | 951 | 958 |
平均比[%] | 100 | 55.07 | 71.74 | 76.09 | 78.34 | 79.73 | 80.6 | 81.64 | 82.34 | 82.6 | 83.21 |
前年月同比[%] | 22.86 | 18.73 | 15.2 | 17.58 | 42.27 | 17.54 | 45.45 | 68.46 | 48.36 | 5.432 | 31.23 |
これまでの果物の推移


詳細なデータとグラフ
みかんの現状と今後
みかんは日本の冬の代表的な果物であり、家庭の食卓には欠かせない存在です。価格の変動は家計にも直結するため、その推移を把握することは、物価全体や農業経済の動向を理解する上で重要です。2025年3月時点でみかんの全国平均価格は1kgあたり1,151円に達しており、過去と比べても明らかな上昇傾向にあります。
価格の推移 ― 2010年から2025年までの動き
みかんの平均価格は、2010年から2020年頃までは1kgあたり700〜900円程度で安定していましたが、2021年以降からじわじわと上昇し、2023年からは顕著な高騰が見られました。2025年3月にはついに1,151円となり、過去15年間で最高水準です。
これは単なるインフレの影響ではなく、気候変動、生産地の高齢化、需給バランスの変化といった複数の要因が複雑に絡み合った結果と考えられます。
地域別の価格 ― 高い都市と安い都市の違い
高価格帯の都市(例:富山、松阪、八王子)
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富山(1,398円):北陸地方はみかんの主産地ではないため、流通コストや輸送費が高くなりやすく、価格が上昇しやすい傾向があります。
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松阪(1,390円)・八王子(1,375円)・前橋(1,374円):首都圏や近畿圏では地価や店舗運営コストも高く、それが小売価格に転嫁されやすいとされています。
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高知(1,331円):逆に産地でありながら高騰しているのは、品質重視の栽培・選別によるブランド価値の向上と、輸出向け出荷が増えていることが背景にあります。
低価格帯の都市(例:盛岡、静岡、福山)
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盛岡(634円):東北地方では果物全体の需要が他地域よりやや低いため、競争原理により価格が抑えられがちです。
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静岡(826円):有名産地であるにもかかわらず比較的安価なのは、流通経路の整備と大量出荷による供給の安定性によるものと考えられます。
前年比の価格増加率 ― 驚異的な上昇
価格上昇率が高い都市では、以下のような特徴が見られます:
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高知(60.55%)・金沢(40.4%)・八王子(36.68%)などでは、他の果物が不作だった影響でみかん需要が急増し、需給バランスが崩れたことが一因です。
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盛岡(55.07%)・静岡(71.74%)・福山(76.09%)など、もともと価格が安かった地域での急上昇は、全国的な需給ひっ迫の波及と見られます。
みかん価格高騰の要因
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気候変動の影響
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近年の異常気象により、他の果物(特にりんご・柿)の収穫が減少したことで、比較的収穫が安定していたみかんに需要が集中しました。
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生産者の高齢化と生産量の減少
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特に和歌山・愛媛など主要産地では、農家の高齢化により作付面積が縮小。国内の供給量が年々減少していることも一因です。
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品質重視の栽培への転換
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高品質化・ブランド化を進める農家が増え、味や見た目の良いものが高値で流通するようになり、平均価格を押し上げています。
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流通コストの上昇
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燃料費・物流費の上昇や人手不足によって流通コストが高騰。これが小売価格にも反映されています。
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消費者の購買行動の変化
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健康志向の高まりにより、果物の消費量が上昇傾向にあり、なかでもビタミンCを豊富に含むみかんの人気が再評価されつつあります。
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今後の見通しと課題
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今後もみかん価格は高止まり、あるいはさらに上昇する可能性があります。
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生産現場では後継者不足や耕作放棄地の増加が深刻で、国や自治体による支援が不可欠です。
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一方で、海外輸出の拡大など新たな市場開拓も進んでおり、価格の二極化(高品質品の高値安定と、一般品の安定供給)も予想されます。
まとめ
みかんの価格動向は、単に果物の値段の話にとどまらず、日本の農業構造や気候変動、地域経済の変化を映す鏡でもあります。価格上昇が続く中、消費者、流通業者、生産者、行政が一体となった取り組みが求められます。
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