はり薬1箱の全国平均は2025年3月時点で1430円。和歌山や鳥取、那覇などでは1600円以上と高騰し、前年比+30%以上の上昇も見られる。一方、八王子や川崎など都市圏では1000円台前半と安定。価格差の背景には物流、競争環境、需要構造の違いがあり、今後も地域差は続く見通し。
医薬品の医療・保険
はり薬の高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 和歌山 | 大津 | 山形 | 鳥取 | 那覇 | 浦安 | 仙台 | 高知 | 長崎 | 松本 |
最新値[円] | 1430 | 1745 | 1698 | 1665 | 1634 | 1628 | 1616 | 1592 | 1555 | 1555 | 1555 |
平均比[%] | 100 | 122 | 118.8 | 116.5 | 114.3 | 113.9 | 113 | 111.3 | 108.8 | 108.8 | 108.8 |
前年月同比[%] | 17.04 | 28.12 | 9.196 | 21.44 | 33.5 | 29.31 | 17.96 | 15.28 | 19.89 | 32.45 | 10.52 |
はり薬の低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 八王子 | 川崎 | 相模原 | 大分 | 甲府 | 浜松 | 前橋 | 日立 | 宇部 | 府中 |
最新値[円] | 1430 | 1061 | 1105 | 1127 | 1169 | 1193 | 1220 | 1265 | 1265 | 1274 | 1286 |
平均比[%] | 100 | 74.21 | 77.28 | 78.82 | 81.76 | 83.44 | 85.33 | 88.48 | 88.48 | 89.1 | 89.94 |
前年月同比[%] | 17.04 | -3.37 | -0.0904 | 0 | 11.76 | 5.95 | 2.263 | 16.27 | 21.05 | 19.96 | 0.942 |
これまでのはり薬の推移


詳細なデータとグラフ
はり薬の現状と今後
はり薬(貼付剤)は、筋肉痛や肩こり、関節痛などに用いられる日常的な医薬品です。高齢化社会の進展や健康意識の高まりとともに需要が安定しており、全国の家庭や職場で広く使用されています。本稿では、2018年1月から2025年3月までの「はり薬1箱あたりの価格動向」と、都市ごとの価格差、最近の価格変動の背景を解説します。
全国平均と価格水準の変化
2025年3月時点での全国平均価格は1430円。これは前年度までの水準に比べ、緩やかな上昇傾向を示しており、特に2023年後半から価格の上昇スピードが加速しています。これは他の一般用医薬品と同様に、物流・原材料コストの上昇やメーカーの価格改定の影響を受けていると考えられます。
高価格地域の特徴と急騰の背景
はり薬の価格が高い都市上位は以下の通りです:
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和歌山:1745円(+28.12%)
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大津:1698円(+9.196%)
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山形:1665円(+21.44%)
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鳥取:1634円(+33.5%)
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那覇:1628円(+29.31%)
これらの都市に共通する特徴は、物流網の制約、地場薬局の価格設定の強さ、あるいは需要に対して供給が限られている点です。特に鳥取や那覇は流通経路が限られ、商品の調達コストが相対的に高いため、それが小売価格に反映されやすい状況です。
また、和歌山や山形のように急な価格上昇(+20%以上)を示す地域では、地域薬局の集約化や大手チェーンの撤退などによる価格競争の低下も背景にあるとみられます。
低価格地域の傾向と維持の理由
一方で、価格が最も低い都市は以下の通りです:
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八王子:1061円(-3.37%)
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川崎:1105円(-0.0904%)
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相模原:1127円
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大分:1169円(+11.76%)
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甲府:1193円(+5.95%)
都市圏に近い八王子・川崎・相模原では、大型ドラッグストアの競争が激しく、販促競争によって価格が抑えられている可能性が高いです。また、川崎では前年からほとんど価格が変わっておらず、価格の安定感が際立っています。
このような都市では、EC(ネット通販)の普及やジェネリック製品の浸透もあり、小売店側が積極的に価格競争を仕掛けていると推測されます。
はり薬価格の上昇要因と業界課題
ここ数年の価格上昇の主な要因には以下が挙げられます:
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原材料費の上昇:粘着材や薬効成分の一部が海外原産であり、円安や原油高の影響で調達コストが増加しています。
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物流費の高騰:「2024年問題」などにより、物流業界の人手不足が深刻化し、医薬品全体における配送コストが上昇。
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需要の増加:在宅勤務や高齢化により慢性的な肩こり・腰痛などが増加し、需要拡大が価格に転嫁されている。
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薬局の業態変化:個人経営薬局の減少や、大手チェーンの価格調整により地域格差が拡大している。
地域別価格差の持続性と今後の展望
今後も地方の一部では高価格傾向が続くと予測されますが、オンライン購入の普及やジェネリック商品のシェア拡大によって価格差が緩和される可能性もあります。
一方で、輸送インフラや流通網の改善が進まない限り、鳥取・那覇・和歌山のような地方における高価格状態の是正は困難です。消費者としては、地域の価格にとらわれず、ネット通販なども活用した賢い購買行動が求められます。
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