日本のはくさい価格の地域差と推移:2025年時点の最新動向と展望

果菜・葉物



2025年4月のはくさい平均価格は357.3円で前年比-5.957%。地域差が大きく、北海道や東北で高く、九州では安価。気候や物流、生産構造が価格に大きく影響し、今後はスマート農業や需給調整技術の導入による安定化が期待される一方、気候リスクや人手不足が課題。

小売物価統計

はくさい小売りの高い都市

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 盛岡 函館 札幌 松阪 旭川 今治 松江 藤沢 さいたま 姫路
最新値[円] 357.3 569 494 483 467 425 425 421 420 415 410
前年同月比[%] -5.957 +31.41 +66.33 -11.05 +25.2 -5.556 +16.44 +9.067 +1.467 +15.49

はくさい小売りの安い都市

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 佐世保 宮崎 長崎 和歌山 福山 水戸 佐賀 福岡 岐阜
最新値[円] 357.3 226 252 265 278 278 282 299 301 302 308
前年同月比[%] -5.957 -18.12 -17.65 -9.556 +12.1 -23.84 -24.4 -18.31 -6.231 -12.46 -20.41

 

はくさいの推移

はくさい小売り価格
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

はくさいの現状と今後

はくさい(白菜)は、日本の冬の定番野菜であり、鍋料理、漬物、炒め物などに幅広く用いられます。特に寒冷期の消費量は多く、季節変動が価格に与える影響が大きい野菜でもあります。本稿では、2010年から2025年4月までのデータを基に、はくさい1kgの小売価格の推移、地域差の要因、そして今後の価格の期待と課題を深く考察します。


全国平均価格の推移と背景

2025年4月時点の全国平均価格は357.3円。前年同月比では-5.957%の下落となっており、キャベツとは対照的な動きを示しています。長期的には波がありつつも上昇基調にありましたが、2024年から2025年にかけての価格下落にはいくつかの背景が存在します。

  • 豊作傾向:2024年後半から2025年初頭にかけて、温暖な気候で作柄が良く、出荷量が増加。

  • 需要減少:エネルギー価格高騰による家計の節約志向で、鍋物の機会減少や量の調整があった可能性。

  • 生産地の拡散と物流改善:地場供給が広がり、遠隔地からの輸送依存度がやや減少した。

これらの要素が複合的に作用し、前年より平均価格が下がったと考えられます。


地域別価格差と特徴分析

高価格地域(盛岡・函館・札幌など)
  • 盛岡:569円(+31.41%)

  • 函館:494円(+66.33%)

  • 札幌:483円(-11.05%)

東北・北海道エリアでは気候的に露地栽培期間が短く、温室などの人工環境での栽培や遠方からの輸送コストが価格に反映されます。特に函館は、前年に比べて66%以上も価格が上昇しており、地場供給不足と外部依存の強まりが背景にあると考えられます。

低価格地域(佐世保・宮崎・長崎など)
  • 佐世保:226円(-18.12%)

  • 宮崎:252円(-17.65%)

  • 長崎:265円(-9.556%)

9州エリアでは、温暖な気候のもとで露地栽培が比較的安定して行われており、供給も潤沢です。これにより価格は安く、かつ前年より大きく下落しています。例えば佐世保や宮崎は、全国平均より30%以上安い価格でありながら、生産地に近いことで安定供給が可能となっています。


はくさい価格変動の要因

  1. 季節性の強さ 冬に需要が急増し、天候次第で供給が左右されやすい。春〜夏は需要が落ち着くため、価格も安定しやすい。

  2. 貯蔵性の限界 キャベツと異なり長期保存が難しく、出荷の「間合い」を調整しづらいことが供給過剰・不足を招きやすい。

  3. 天候・気温の影響 暖冬で消費が減ると価格が下がり、逆に寒波で生育不良が起こると価格は高騰する。

  4. 地域依存の偏り 特定の産地(茨城、長野、愛知など)への依存度が高く、そこでの作柄不調が全国価格に直結する傾向があります。

  5. 家庭調理の減少傾向 共働き世帯の増加や外食志向により、家庭での鍋料理頻度の減少も需要構造に影響を与えつつあります。


今後の価格動向と期待

短期的見通し

2025年後半に向けては、以下のようなシナリオが考えられます:

  • 価格は季節要因で上昇傾向:秋〜冬に向けて鍋需要が増加すれば、価格は上昇する見込み。

  • 気候の影響がカギ:台風や集中豪雨などがあれば、局所的な高騰も。

中長期的展望
  • 栽培地域の分散と技術革新:施設栽培や高地・低地の作付け分散により、供給の安定化が期待される。

  • 物流効率の改善:産直ルートの拡大やAIを用いた需給マッチングの導入により、価格の急変を抑制可能。

  • 漬物・加工用途の拡大:生鮮だけでなく、業務用・加工用需要が伸びることで、出荷の安定化が図れる可能性。

ただし、生産者の高齢化や気候変動リスクが解決しなければ、「高級化する葉物野菜」という未来も想定しなければなりません。


まとめ:価格に現れる農業構造の脆弱性

はくさいの価格変動は、気候・地域構造・物流・需要トレンドといった日本の農業課題を反映する象徴的な存在です。今後は、消費者・生産者・流通業者が1体となって、持続可能で安定的な流通を目指す姿勢が求められるでしょう。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました