ねぎ価格の推移と今後の見通し【日本の小売価格データ分析】

果菜・葉物



2025年4月時点のねぎ1kg平均小売価格は855.6円で、前年同月比で約29.5%の大幅な上昇を記録。地域間で価格差が大きく、和歌山では1170円、水戸では634円と最大で約2倍の開きがある。天候不順による生育不良、需要の増加、輸送コストの上昇が価格上昇の背景にある。今後は生産技術の改善や産地分散によって価格の安定が期待される一方、気候変動リスクには引き続き注意が必要。

小売物価統計

ねぎ小売りの高い都市

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 和歌山 長岡 府中 山口 札幌 枚方 福島 伊丹 八戸 今治
最新値[円] 855.6 1170 1057 1047 1031 1025 1017 999 996 990 988
前年同月比[%] +29.49 -9.653 +50.14 +69.97 +17.16 +45.39 +60.41 +34.82 +29.86 +32 +66.33

ねぎ小売りの安い都市

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 佐賀 佐世保 水戸 長崎 岐阜 松江 宇都宮 福山 熊谷 鳥取
最新値[円] 855.6 606 617 634 657 664 666 668 668 691 693
前年同月比[%] +29.49 +5.944 +21.94 -1.858 +34.36 +8.674 +15.22 +6.539 +11.33 +12.18 +23.53

 

ねぎの推移

ねぎ小売り価格
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

ねぎの現状と今後

ねぎは和食の基本食材であり、日本人の食生活に欠かせない野菜の1つである。薬味や煮物、鍋料理など、用途が幅広く、季節を問わず消費されるが、その価格は年々変動している。本稿では、2010年から2025年4月までのねぎ価格の推移をもとに、背景にある問題や今後の動向を丁寧に分析する。


ねぎ価格の長期的な推移と直近の動向

ねぎの1kgあたり小売価格は、長期的には上昇傾向にある。2010年代前半は600円台で比較的安定していたが、2020年代に入ってからは上昇が顕著になってきた。特に2025年4月の平均価格855.6円は前年同月比で+29.49%と非常に大きな伸びを示しており、家計への影響も小さくない。

この上昇の背景には、以下のような要因が複合的に絡んでいる:

  • 気候変動による生育障害

  • 肥料・燃料などの農業資材費の高騰

  • 輸送コストの上昇

  • 地域的な需要の増加


地域別の価格差とその背景

高価格帯の地域(上位10位)

  • 和歌山(1170円)・長岡(1057円)・府中(1047円)などは、全国平均を大きく上回っている。

  • これらの地域では、地元産の供給が少ない、もしくは高品質なブランドねぎが主流であること、輸送コストが価格に転嫁されやすいことなどが影響している。

特に府中や枚方といった都市部近郊では、都市型物流費の高さと、品質へのこだわりが価格を押し上げている。

低価格帯の地域(下位10位)

  • 佐賀(606円)、佐世保(617円)、水戸(634円)などは比較的価格が抑えられている。

  • これらの地域では、地元での生産が盛んであることや、地産地消が定着していることから、物流コストを抑えられていると考えられる。

価格上昇の幅も地域でばらつきがあり、例えば水戸は前年同月比で-1.86%と逆に下がっている。1方、今治(+66.33%)や府中(+69.97%)のように急上昇している地域もある。


ねぎ価格上昇の原因分析

気候要因

近年の猛暑や長雨、台風の頻発はねぎの育成環境を直撃しており、収穫量が減少している。ねぎは比較的寒冷地向きの作物であるため、温暖化の影響がより強く出やすい。

生産コストの上昇

肥料・農薬、燃料の価格上昇は、直接的に農業生産コストに跳ね返る。特に2023年以降、ウクライナ情勢や為替の円安により、輸入資材費が高騰している。

輸送・流通コスト

燃料費の高止まりや人手不足による物流コスト上昇が、遠距離輸送によって価格に転嫁されるケースが増加。特に北海道や9州、4国などは流通負荷が重く、都市部への出荷にコストがかかる。

需要構造の変化

健康志向の高まりとともに、ねぎを多用する鍋物や和食の人気が再評価され、通年での需要が底堅くなっている。加えて、外食産業の回復によって業務需要が回復していることも1因である。


今後の価格見通しと安定化策

価格は中長期的に高止まりか

今後数年においても、価格は短期的な調整があるにせよ、中長期的には高水準で推移する可能性が高い。主な理由は以下の通り:

  • 生産者の高齢化による供給減

  • 労働力不足

  • 不安定な気候によるリスク継続

安定化に向けた取り組み

  • スマート農業の導入により、気候変動に対応した安定生産技術の普及が進めば、供給の変動幅は縮小する可能性がある。

  • 複数産地体制(リスク分散)の強化により、1地域の不作による全国的価格上昇を防ぐ。

  • 価格調整基金買い取り制度の充実も価格安定には有効。


消費者・行政・生産者への提言

  • 消費者:価格の高騰期はカット野菜や冷凍ねぎなど代替品の活用が現実的。

  • 行政:中小農家の支援、特に設備投資や後継者育成策を強化することが必要。

  • 生産者:気候変動に強い品種の導入や、IT活用による労働負担軽減が今後の鍵。


まとめ

ねぎの価格は、供給リスクの高まりと需要の安定的な増加を背景に、今後もしばらく高水準を保つと見られる。ただし、テクノロジーの導入や政策支援によって、価格の変動幅を抑える可能性もある。消費者・生産者・政策の3者が連携して、ねぎの「適正価格」を維持する取り組みが求められる。

 

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