日本のなす1kgの小売価格は2025年4月時点で平均771.9円と前年より微増。府中や和歌山では急騰する一方、水戸や佐賀では値下がりが顕著。地域間格差は大きく、気候変動や物流コスト、地産地消体制の有無が価格差の要因。今後は気候やスマート農業の導入次第で価格安定の可能性もあるが、構造的には上昇圧力が継続する見通し。
小売物価統計
なす小売りの高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 府中 | 伊丹 | 甲府 | 和歌山 | 福井 | さいたま | 小山 | 今治 | 姫路 | 札幌 |
最新値[円] | 771.9 | 1074 | 939 | 914 | 893 | 887 | 883 | 874 | 866 | 863 | 860 |
前年同月比[%] | +0.816 | +26.65 | +3.642 | -7.208 | +65.99 | +8.039 | +6.643 | -0.795 | +14.55 | +13.11 | -1.938 |
なす小売りの安い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 水戸 | 佐賀 | 佐世保 | 福山 | 熊本 | 長野 | 青森 | 津 | 高知 | 高松 |
最新値[円] | 771.9 | 559 | 578 | 591 | 618 | 631 | 638 | 655 | 657 | 669 | 675 |
前年同月比[%] | +0.816 | -10.13 | -11.21 | -13.34 | -18.25 | -6.38 | -4.06 | +1.708 | +1.546 | -7.597 | -5.197 |
なすの推移


詳細なデータとグラフ
なすの現状と今後
なすは日本の食卓に欠かせない夏野菜の1つであり、年間を通して安定的に消費される品目です。特に夏場には価格が下がる傾向がありますが、気候変動や地域間流通、輸送費、労働力不足などが価格に影響を及ぼす場面も多くなってきました。本稿では、2010年1月から2025年4月までのデータをもとに、なすの小売価格の推移と課題、今後の期待について解説します。
2025年4月時点の最新データの概観
最新の全国平均価格は771.9円/kgで、前年同月比で+0.816%とわずかに上昇しています。都市別に見ると、最も高いのは府中の1074円で、前年同月比+26.65%と急騰。1方で最も安いのは水戸の559円で、同-10.13%と大幅な下落です。価格のばらつきは地域によって大きく、需給構造や地元生産・流通の差が色濃く表れています。
過去15年間の価格推移とその背景
2010年から2020年代前半までの価格推移を概観すると、なすは700円前後を中心に変動してきました。以下のような要因が価格変動に影響を与えています:
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気候異変:猛暑・冷夏・長雨は収穫量に大きく影響し、価格を不安定にします。
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労働力不足:農業従事者の高齢化と担い手不足により、生産量に限界が出始めています。
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資材高騰:ビニールハウス、肥料、輸送燃料などのコスト上昇が生産コストに跳ね返り、小売価格へ転嫁されることもあります。
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需給ミスマッチ:1時的な供給過剰で暴落する年もあれば、需要集中で高騰する局面もあります。
地域差の背景 ― なぜ高い地域と安い地域があるのか
価格が高い地域(府中、伊丹、甲府など)は、以下のような共通点があります:
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都市圏に近く、地代や流通コストが高い
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地産地消ではなく遠方からの調達が多く、物流コストが乗る
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品質志向の消費者が多く、高単価の商品が流通
1方、安い地域(水戸、佐賀、福山など)は以下の特徴があります:
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地場野菜としてなすの生産が盛ん
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ローカルスーパーや直売所での流通が中心
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大量入荷・早期売り切りを前提とした価格設定が主流
また、前年同月比で見ても、高騰する地域と値下がりする地域で真逆の傾向が出ています。これは、地域独自の気候、作況、流通網、店舗戦略の違いによるものと考えられます。
直近の問題点 ― 価格の2極化と消費者心理
2025年現在、最も注目すべき問題は価格の地域間格差と2極化です。府中の1074円と水戸の559円の差は、実に515円(約2倍近く)にもなります。この差は消費者の購買意欲に直接影響し、結果として地域間のなす消費量に格差が生じるリスクがあります。
また、物価上昇に伴って「買い控え」や「他の安い野菜に切り替える動き」も見られ、特売でなければ売れ残るという悪循環も報告されています。
今後のなす価格の見通しと期待
今後の価格動向において注目されるのは以下の点です:
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気候回復と豊作年への期待:過去には天候が安定した年に価格が1気に落ち着いた例もあるため、2025年夏以降の天候は重要な鍵を握ります。
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生産地の工夫と技術導入:ハウス栽培の省力化やスマート農業の導入が進めば、コスト削減が期待され、価格安定にも寄与します。
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流通の効率化:地場野菜の販路拡大や、産直販売ECの進展により、都市部の価格抑制につながる可能性もあります。
ただし、全体としては中長期的になすの価格は緩やかに上昇基調を描くと見られます。背景には人件費・資材費の構造的上昇と、生産者の減少があるからです。
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