2023年のじゃがいも作付面積は全国で71.2千ha。北海道が圧倒的シェアを占めるが、鹿児島や熊本など一部地域では拡大傾向。全体では微減で、高齢化や気候変動が課題。将来の安定供給には、主力産地の強化と早出し地域の維持、省力化や担い手支援が重要となる。
じゃがいもの栽培ランキング
都道府県 | 最新値[kha] | 全国比[%] | 前年比[%] | |
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全国 | 71.2 | 100 | -0.28 | |
1 | 北海道 | 48.5 | 68.12 | |
2 | 鹿児島 | 4.41 | 6.194 | +0.915 |
3 | 長崎 | 3.07 | 4.312 | -0.968 |
4 | 茨城 | 1.59 | 2.233 | -2.454 |
5 | 千葉 | 1.08 | 1.517 | -3.571 |
6 | 福島 | 0.884 | 1.242 | -4.946 |
7 | 長野 | 0.758 | 1.065 | -6.65 |
8 | 熊本 | 0.651 | 0.914 | +3.828 |
9 | 青森 | 0.537 | 0.754 | -11.39 |
10 | 広島 | 0.506 | 0.711 | -1.172 |
11 | 静岡 | 0.474 | 0.666 | -4.819 |
12 | 宮城 | 0.474 | 0.666 | -1.044 |
13 | 宮崎 | 0.4 | 0.562 | -4.762 |
14 | 三重 | 0.187 | 0.263 | +1.081 |
15 | 岡山 | 0.158 | 0.222 | -4.242 |
16 | 佐賀 | 0.155 | 0.218 | +10.71 |


詳細なデータとグラフ
じゃがいもの現状と今後
2023年における全国のじゃがいも作付面積は71.2千haで、前年から-0.28%の微減となりました。これは、日本全体の農地面積の縮小や高齢化にともなう傾向の1部であり、労力や気象の影響が大きい作物であることも影響しています。
じゃがいもは加工・業務用の需要が多く、供給の安定性が求められるため、1部大規模産地への集中化が進んでいます。
北海道 ― 圧倒的主力産地の維持と課題
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作付面積:48.5千ha(全国の68%超)
北海道は、冷涼な気候・大規模農地・高い機械化率という条件を活かし、日本のじゃがいも栽培の中核を担っています。加工用・業務用・生食用すべてに対応しており、輸出を含めた供給体制の要です。
将来的にも主力産地であり続けることが確実ですが、近年は猛暑や干ばつによる収量不安が懸念され、気候変動に対応した品種開発や灌漑体制の見直しが重要となります。
鹿児島県 ― 早出しじゃがいもの西の拠点
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作付面積:4.41千ha(前年比:+0.915%)
鹿児島は温暖な気候を活かした早春どりじゃがいもの産地で、北海道とは出荷時期が補完的関係にあります。全国的に珍しく面積が増加しており、収益性の高さと需要の安定性が背景と考えられます。
ただし、今後は高齢化にともなう担い手確保と、輸送体制の維持が鍵になります。
長崎県 ― 9州の伝統的産地
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作付面積:3.07千ha(前年比:-0.968%)
長崎は温暖な気候を利用した春作じゃがいもに強く、近年では加工用の比率も上昇しています。減少傾向ではあるものの、農協や産地グループによる出荷調整体制が整っており、1定の地位を保っています。
高齢化や耕作条件の厳しさを乗り越えるため、今後は法人化やICT農業の導入が求められます。
関東地域(茨城・千葉) ― 都市近郊型の縮小傾向
茨城県
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作付面積:1.59千ha(前年比:-2.454%)
茨城はかつて都市部向けの供給地として重要でしたが、農業従事者の高齢化や用地転用の進行により、年々作付面積が減少しています。今後も縮小傾向は続く見通しです。
千葉県
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作付面積:1.08千ha(前年比:-3.571%)
千葉も茨城同様、都市近郊型農業の限界が見え始めています。特に小規模な農家が中心であり、担い手不足の影響を大きく受けています。地産地消や直販など、新たな流通の工夫が求められています。
東北・中部地方 ― 対応力のある中規模産地
福島県
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作付面積:0.884千ha(前年比:-4.946%)
福島は気候条件と土壌がじゃがいも栽培に適しており、中山間地を利用した栽培が行われていますが、高齢化と流通面の制約により減少傾向にあります。
長野県
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作付面積:0.758千ha(前年比:-6.65%)
長野は標高の高い冷涼な地域を活かした夏作が中心ですが、他作物との作付競合が激しく、今後は差別化された品種・ブランド化が必要になるでしょう。
9州・中国地方の小~中規模産地
熊本県
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作付面積:0.651千ha(前年比:+3.828%)
熊本は数少ない面積増加地域であり、農業法人の台頭や、気候条件を活かしたリレー出荷体制の構築が進んでいると考えられます。今後も成長の可能性があります。
青森県
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作付面積:0.537千ha(前年比:-11.39%)
急激な減少が目立つ青森では、担い手不足や収益性の低下が顕著と見られます。過去には1部業務用供給もありましたが、将来的には縮小の傾向が続く可能性が高いです。
広島県
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作付面積:0.506千ha(前年比:-1.172%)
小規模ながら地域内需要に対応しており、家庭菜園や直売所との結びつきが強い傾向があります。農業振興策によっては維持可能ですが、大きな拡大は見込みにくいです。
今後の展望と政策的課題
今後のじゃがいも栽培の維持・発展には以下のような視点が重要になります:
大規模産地の安定確保
北海道のような主力産地の安定供給が引き続き重要です。災害リスクの軽減や、輸送網の確保、海外輸出などが焦点になります。
② 早出し産地の機能強化
鹿児島や長崎などの時期分散型産地は、需給の調整弁としての機能を高めるべきです。農地の維持と収益性の向上が課題です。
③ 地域小規模産地の再編
中小規模地域では、加工用・契約栽培の活用、あるいはブランド化・直販強化などにより、生き残りを図る必要があります。
④ 担い手育成とスマート農業の導入
じゃがいもは重労働が多いため、自動収穫機・ドローン・センシング技術による省力化は喫緊の課題です。また、法人経営の拡充や若手育成が、今後の生産を支えます。
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