2010年以降、日本のししゃも100gの平均価格は上昇傾向にあり、2025年4月には227円に達した。地域によって価格差が大きく、松本では302円、八戸では151円と倍近い差がある。価格変動には本ししゃもとカラフトししゃもの混在、輸入依存、漁獲量の変動、地域流通コストなどが影響している。今後も価格は高止まりが予想される中、消費者の理解と水産資源管理の在り方が問われている。
小売物価統計
ししゃも小売りの高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 松本 | 所沢 | 高松 | 大分 | 宇部 | 長野 | 西宮 | 立川 | 徳島 | 熊本 |
最新値[円] | 227 | 302 | 283 | 276 | 274 | 272 | 269 | 265 | 263 | 261 | 260 |
前年同月比[%] | +5.94 | +22.76 | +19.92 | +18.45 | -4.196 | +1.115 | +4.264 | +36.6 | +15.86 | +3.984 | +8.333 |
ししゃも小売りの安い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 八戸 | 秋田 | 奈良 | 東大阪 | 盛岡 | 函館 | 甲府 | 大阪 | 姫路 | 岡山 |
最新値[円] | 227 | 151 | 173 | 178 | 179 | 190 | 191 | 193 | 196 | 198 | 198 |
前年同月比[%] | +5.94 | +4.217 | -16.43 | -6.283 | +12.43 | +7.303 | -4.926 | -18.67 | +5.882 | -30.28 |
ししゃもの推移


詳細なデータとグラフ
ししゃもの現状と今後
2010年から2025年にかけて、ししゃもの小売価格は全国平均で着実に上昇を続け、2025年4月時点では227円に達しています。前年比では+5.94%と中程度の上昇ですが、過去15年間でみれば、物価や物流コストの上昇、輸入魚の価格変動が継続的な値上げ要因となってきました。
特にししゃもは「本ししゃも(北海道太平洋側でのみ漁獲)」と「代用ししゃも(主にノルウェーなどからのカラフトししゃも=カペリン)」が流通しており、これらの区別が消費者に明確でないまま価格だけが変動していることが、構造的な問題の1つとなっています。
地域別価格差とその背景
2025年4月のデータで見ると、最も高いのは松本(302円)、所沢(283円)、高松(276円)など中部・4国・関東圏が多く、逆に最も安いのは8戸(151円)、秋田(173円)、奈良(178円)など地方都市に集中しています。
この価格差の背景には以下のような要因があります:
-
代用魚の仕入れルートの違い:都市部では需要に応えるため輸入品に頼る傾向が強く、国際相場の変動が価格に直結しやすい。
-
流通コストの地域差:山間部や離島は輸送コストが高く、価格が上乗せされる傾向にある。
-
購買層の嗜好:ししゃもを日常的に食べる文化がある地域では価格が安く抑えられていることもある。
また、前年同月比で見ると、西宮(+36.6%)、松本(+22.76%)、所沢(+19.92%)などで急激な価格上昇が見られる1方、岡山(-30.28%)、大阪(-18.67%)、奈良(-16.43%)などでは大幅な下落も起きており、全国的な価格のばらつきが1層顕著になっています。
価格変動を引き起こす要因
ししゃもの価格変動には、以下の要素が複雑に絡んでいます:
輸入依存と為替相場
日本のししゃも消費の多くはノルウェーなどからのカラフトししゃもに依存しており、円安になると輸入価格が上昇します。2020年代初頭から続く円安傾向がこの影響を強めています。
天然資源の減少
北海道産の本ししゃもは漁獲量が減少傾向にあり、希少価値が高まり価格が上がる1因になっています。また、地球温暖化や海洋環境の変化も資源確保に不利に働いています。
物流費と人件費の上昇
冷凍輸送や加工・梱包のコスト増加が価格に上乗せされています。特に都市圏向けの配送には人手不足が大きな課題となっています。
消費者認識のあいまいさ
「本ししゃも」と「代用ししゃも」の価格差や品質差が理解されにくく、実際の価格形成に透明性がないため、市場が混乱しやすい状況です。
今後の価格推移と期待される対応策
価格は高止まりか、緩やかな上昇が継続
今後も円安や輸入依存体制が継続する限り、ししゃもの価格が大きく下がる見込みは薄く、高値安定もしくは緩やかな上昇が想定されます。
国産ししゃもの保護とブランド化の重要性
北海道の本ししゃもは、今後さらにブランド価値を高めていく必要があります。漁業資源の持続可能性を保つ取り組みと並行し、消費者への啓発がカギとなります。
代用ししゃもの表示義務の徹底
消費者が納得して購入するためには、「本ししゃも」と「カラフトししゃも」の明確な表示を制度化することが重要です。これにより、価格差の妥当性が理解され、市場の透明性が向上します。
流通の効率化
地域による物流格差を埋めるため、共同配送・冷凍網の再編などにより輸送コストの削減を図ることも必要です。
まとめ
ししゃもの価格は全国平均で227円と、2010年以降着実に上昇してきました。これは輸入依存、流通コスト、天然資源の希少性などが複合的に作用した結果です。特に近年では、地域ごとの価格格差が顕著になっており、同じ日本国内でも約2倍の開きが見られる状況です。
今後も高値安定が続くと見られる中で、国産資源の保護、消費者への情報提供、輸入魚との適切な競争環境整備が、日本の水産流通における大きな課題となっていくでしょう。
コメント