日本のさやいんげん栽培は1970年代から需要に支えられ発展してきましたが、現在は高齢化や輸入品との競争、気候変動の影響で減少傾向です。2023年の平均は4.37khaで、福島や北海道、千葉が主要産地として健闘。今後はスマート農業や地域ブランド化が鍵となる持続可能な体制構築が求められています。
野菜栽培のデータとグラフ
さやいんげん栽培の最大と最新
全国 | 福島 | 北海道 | 千葉 | 鹿児島 | 長野 | 群馬 | 茨城 | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 1987年 | 1980年 | 2010年 | 1981年 | 1991年 | 1979年 | 1973年 | 1980年 |
最新値[kha] | 4.37 | 0.434 | 0.382 | 0.381 | 0.217 | 0.198 | 0.178 | 0.166 |
最大値[kha] | 12.2 | 1.32 | 0.664 | 0.92 | 0.632 | 0.538 | 0.409 | 0.82 |
前年比[%] | -2.018 | -2.691 | 12.02 | -2.057 | -2.691 | -3.415 | 0.565 | -0.5988 |
全体比[%] | 100 | 9.931 | 8.741 | 8.719 | 4.966 | 4.531 | 4.073 | 3.799 |

これまでの推移


詳細なデータとグラフ
さやいんげん栽培についての推移と展望
さやいんげんは、和洋中問わずさまざまな料理で用いられる汎用性の高い緑黄色野菜であり、栄養価も高く、家庭菜園から業務用まで幅広く需要があります。栽培が比較的容易であることから、全国的に生産されてきましたが、近年では労働力不足や市場価格の変動、天候リスクなどの影響を受けています。
全国の長期的な栽培面積推移(1973〜2023)
1970年代から1990年代にかけて、さやいんげんは家庭での調理用としての需要に支えられ、生産面積は安定していました。しかし2000年以降、加工食品や冷凍野菜の普及、輸入品との競合などにより国内の生産面積は徐々に減少しています。
2023年の全国における果菜類平均栽培面積は4.37khaで、前月比では-2.018%とわずかに減少しています。これは、季節的な要因に加え、生産者の高齢化や設備維持の困難さなどが影響していると考えられます。
主要産地別の現状と特徴
福島県(0.434kha/平均比9.931%増)
福島は全国有数のさやいんげん産地であり、冷涼な気候を活かした夏場の栽培が中心です。高原地帯の利用や作型の工夫により安定した収量を維持しており、地元ブランドとしても評価されています。ただし、前月比では-2.691%と減少しており、天候や病害虫の影響が懸念されます。
北海道(0.382kha/8.741%増)
北海道は夏季の冷涼で日照時間が長い環境を活かして、夏場のさやいんげん栽培に適しています。2023年の前月比で+12.02%と大きく増加しており、これは出荷ピーク期に向けた作付面積の拡大とみられます。今後も輸送インフラを活かした全国出荷が期待されます。
千葉県(0.381kha/8.719%増)
千葉は首都圏への近さを活かした都市近郊型農業の代表的地域です。施設栽培も多く、安定した出荷体制があります。前月比では-2.057%ですが、通年での供給力は高く評価されています。
鹿児島県(0.217kha/4.966%増)
鹿児島は冬春出荷の中心地であり、温暖な気候を活かして他地域が出荷できない時期の需要を支えています。前月比-2.691%は季節の切り替わりによるもので、今後の出荷に向けた準備期間とも考えられます。
長野県・群馬県・茨城県
これらの内陸県は、標高差を活かして初夏から秋にかけての栽培に適しており、複数作型での生産が可能です。特に群馬は前月比+0.565%と微増傾向にあり、生産意欲の維持が見られます。茨城は出荷拠点としても重要な役割を担い、全国的な供給の一翼を担っています。
課題と直面する構造的問題
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高齢化と担い手不足 後継者不在により栽培面積が減少傾向にあります。
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輸入品との価格競争 冷凍いんげんの輸入増加により、国産品の価格競争力が低下しています。
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天候リスクの拡大 近年は気温の上昇や豪雨、日照不足が作柄に大きな影響を及ぼすようになっており、作型や栽培スケジュールの見直しが求められています。
今後の推移と展望
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スマート農業の導入 ドローン、環境制御型ハウス、AI栽培診断ツールなどにより省力化と高品質化が期待されます。
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ブランド化と地産地消 福島や北海道など、特徴ある産地ではブランド構築による高付加価値化が進む可能性があります。
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複合経営による持続性の確保 さやいんげんを他の野菜や畜産と組み合わせた複合経営により、リスク分散と収益確保が図られる動きも見られます。
まとめ
日本のさやいんげん栽培は、家庭用需要の安定と栄養価の高さから今後も一定の需要が見込まれます。一方で、高齢化やコスト高、輸入圧力という三重苦に直面しており、今後はスマート農業や地域ブランド、若手農業者の支援などを通じた抜本的な構造改革が鍵となります。
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