2025年4月時点のきゅうり1kgの全国平均は648.5円で前年比-7.268%。盛岡や所沢では上昇した一方、長野や熊本などでは大幅に下落。地域差の要因は流通構造や生産地の違いにあり、供給過剰や消費低迷が価格下落の一因。今後はスマート農業や政策支援で安定化が期待されるが、資材高騰の影響も懸念される。
小売物価統計
きゅうり小売りの高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 盛岡 | 長崎 | 山口 | 所沢 | 旭川 | 今治 | 松阪 | 松江 | 那覇 | 東大阪 |
最新値[円] | 648.5 | 891 | 832 | 788 | 780 | 776 | 766 | 765 | 760 | 736 | 734 |
前年同月比[%] | -7.268 | +33.38 | +0.483 | +8.242 | +16.07 | +1.571 | +1.726 | -2.795 | -12.14 | -7.305 | -1.74 |
きゅうり小売りの安い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 長野 | 松本 | 福井 | 佐世保 | 熊谷 | 熊本 | 川崎 | 静岡 | 八王子 | 姫路 |
最新値[円] | 648.5 | 511 | 512 | 522 | 536 | 541 | 563 | 565 | 565 | 566 | 574 |
前年同月比[%] | -7.268 | -12.65 | -11.11 | -18.31 | -15.46 | -19.01 | -21.48 | -9.164 | -11.86 | -5.509 | -11.01 |
きゅうりの推移


詳細なデータとグラフ
きゅうりの現状と今後
きゅうりは日本人の食生活において、サラダや漬物、冷やし中華など幅広い料理に使われる定番野菜です。特に夏季に需要が高まり、比較的価格が安定している印象を持たれがちですが、実際には天候、地域間流通、生産構造の変化などによって価格は年々変動しています。本稿では、2010年から2025年4月までの価格データを基に、きゅうりの価格推移、地域間格差、その背景、今後の見通しについて解説します。
2025年4月時点の最新価格データの分析
2025年4月の全国平均価格は648.5円/kgで、前年同月比では-7.268%の下落となっています。多くの地域で価格が下落する中で、盛岡(891円、+33.38%)や所沢(780円、+16.07%)などは逆に価格が上昇しています。1方、最安値となった長野(511円)は前年から-12.65%の下落となり、熊本や福井、佐世保といった他地域でも10~20%台の下落が目立ちます。
このような価格差は、地域の生産量、地元消費構造、流通コスト、天候条件など複数の要素が複雑に絡み合っています。
過去15年間の価格推移の概観と背景
きゅうりの小売価格は、過去15年間でおおむね600~700円/kg台を中心に推移してきました。大きな価格上昇や下落が見られるのは以下のようなケースです:
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天候異常(猛暑・長雨):露地栽培が主流のきゅうりにとって、天候は生産量を大きく左右します。特に収穫期の高温や豪雨は収量を減少させ価格上昇を招きます。
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生産者の高齢化と供給不足:若手農家の減少により、きゅうりの作付面積が減少傾向にあります。
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原材料コストとエネルギー価格の影響:肥料やハウス用資材、輸送費などが高騰した際、コストの上昇が小売価格に転嫁されるケースがあります。
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新型コロナウイルスや物流混乱の影響:1部の年では物流停滞による供給難や価格変動も確認されました。
地域間格差の実態と背景要因
きゅうりの価格は全国でばらつきが大きく、今回のデータでも盛岡(891円)と長野(511円)で約380円の差が見られます。このような格差は次のような要因によって生まれます。
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盛岡や長崎、山口など高値地域:これらの地域では地場生産が少なく、他県からの仕入れに依存している傾向があり、輸送コストが価格に上乗せされやすい。また、購買層の嗜好が品質志向であることも高価格を支えています。
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長野、松本、福井など安値地域:生産地が近く地元での出荷が多いため、流通コストが抑えられています。さらに、直売所やローカルスーパーでの販売が主流であり、大量仕入れや低価格販売が行われています。
また、特定の地域(熊本や熊谷)で20%前後の価格下落が見られる点については、豊作や需要低迷、販路拡大による価格競争の影響も考えられます。
直近の課題 ― なぜ平均価格が下がったのか?
2025年4月時点での平均価格が前年より7%以上下がった背景には、以下の複合要因が想定されます:
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気候安定による供給過剰:前年より天候が良く、生産量が増えたことによる価格下落の圧力。
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消費者の節約志向の強まり:物価全体の高騰によって、家計を抑えようとする動きが強まり、価格に敏感な購買行動が浸透。
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流通の効率化:1部地域ではJAを介さずに直販型・EC型の流通網が整備され、価格競争が起きている可能性があります。
今後のきゅうり価格の見通しと期待
今後の価格動向を占ううえで注目すべきポイントは以下の通りです:
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スマート農業の導入と供給安定化:気温・湿度管理が可能なハウス栽培やAIによる収穫予測が進めば、極端な価格変動を防ぎやすくなります。
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需要回復と飲食業界の動向:観光業や外食産業の復調により、業務用需要が増加すれば価格も底上げされる可能性があります。
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農業支援政策の影響:国や自治体による補助金や担い手育成策が実を結べば、生産基盤の維持につながり、供給安定・価格安定に寄与するでしょう。
ただし、エネルギー価格や資材価格の高止まりが継続すれば、コスト増による価格上昇リスクも残ります。中長期的には、きゅうり価格は緩やかに上昇基調に戻る可能性が高いと考えられます。
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