2025年3月時点での日本のえのきだけ1kgの平均小売価格は672.3円で、近年は大幅な価格上昇が見られる。特に安価だった地域でも70%以上の上昇が確認され、エネルギー費や人件費、気候変動などが主な要因となっている。地域によって価格差も大きく、今後はスマート農業の導入や政策的支援による価格安定策が求められている。
食料品の都市別小売価格
えのきだけの高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 大分 | 姫路 | 高松 | 山口 | 和歌山 | 福岡 | 佐賀 | 伊丹 | 枚方 | 北九州 |
最新値[円] | 672.3 | 953 | 906 | 869 | 855 | 845 | 827 | 823 | 809 | 800 | 797 |
平均比[%] | 100 | 141.8 | 134.8 | 129.3 | 127.2 | 125.7 | 123 | 122.4 | 120.3 | 119 | 118.5 |
前年月同比[%] | 16.6 | 54.96 | 45.66 | 36.64 | 23.91 | 8.333 | 32.32 | 31.89 | 24.27 | 8.108 | 24.14 |
えのきだけの低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 長野 | 熊谷 | 福井 | 松本 | 川口 | 大津 | 徳島 | 川崎 | 新潟 | 小山 |
最新値[円] | 672.3 | 490 | 508 | 509 | 528 | 541 | 569 | 570 | 583 | 585 | 586 |
平均比[%] | 100 | 72.88 | 75.56 | 75.71 | 78.54 | 80.47 | 84.64 | 84.78 | 86.72 | 87.02 | 87.16 |
前年月同比[%] | 16.6 | 26.61 | -0.196 | 15.95 | 25.71 | 4.642 | -3.559 | 8.571 | 11.05 | 11.43 | 4.643 |
これまでのきのこ類の推移


詳細なデータとグラフ
えのきだけの現状と今後
2025年3月時点でのえのきだけ1kgの全国平均価格は672.3円となっており、他のきのこ類(しめじや干ししいたけ)と比べると比較的安価な部類に属します。しかしながら、近年はこのえのきにも価格上昇の傾向が見られ、特に2024年から2025年にかけては、地域によって50〜80%を超える値上がりが確認されています。
えのきだけは水分量が多く、保存性が低いため、地域の流通環境に強く影響を受けやすい商品であり、物流コストや地域消費動向が価格に反映されやすい特徴を持ちます。
都市別に見るえのきだけ価格の特徴
高価格地域の傾向
高価格トップ10は以下のとおりです(2025年3月時点):
都市名 | 価格(円/kg) | 前年同期比 |
---|---|---|
大分 | 953円 | +54.96% |
姫路 | 906円 | +45.66% |
高松 | 869円 | +36.64% |
山口 | 855円 | +23.91% |
和歌山 | 845円 | +8.33% |
これらの都市では、以下のような要因が背景にあると考えられます:
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地域特有の物流制約:山間部や半島部では、えのきの輸送にコストがかかりやすい。
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地域限定のブランド化・産直販売:高品質な地元産えのきが付加価値として扱われる傾向もある。
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スーパー間の競争が緩やか:価格競争が強くない地域では、高値での販売が継続しやすい。
低価格地域の傾向
低価格の地域トップ10は以下の通り:
都市名 | 価格(円/kg) | 前年同期比 |
---|---|---|
長野 | 490円 | +72.88% |
熊谷 | 508円 | +75.56% |
福井 | 509円 | +75.71% |
松本 | 528円 | +78.54% |
川口 | 541円 | +80.47% |
特筆すべきは、価格が安い地域でも軒並み70%以上の価格上昇が見られている点です。これは以下のような複合的な要因によります:
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主要生産地からの近接性:長野や松本などは、えのきの一大生産地であるため流通コストが低く、これまで価格が抑えられていた。
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流通の再編や人件費上昇:安価であるがゆえに価格が抑えられてきた地域でも、エネルギーや物流コストの上昇を受け、値上げが避けられなくなっている。
えのきだけの価格上昇要因
ここ数年でえのきだけの価格が大きく上昇した背景には、以下のような複数の社会・経済的要因が複雑に絡み合っています。
エネルギーコストの高騰
えのきは温度管理がシビアな栽培品目で、空調設備・水管理に多大なエネルギーを要します。電気・燃料代の上昇が栽培コストに直結しています。
パッケージ・物流資材の価格上昇
プラスチック包装や流通用トレーの原材料費も上がっており、小売店ではそのコストが価格に転嫁されやすい状況です。
人件費と労働力不足
収穫や選別、包装といった工程には一定の人手が必要であり、農業分野全体で人材確保が難しくなっています。特に地方では高齢化が進行中です。
気候変動による栽培環境の変化
異常気象(猛暑・湿度異常・豪雨等)がハウス栽培の管理を難しくし、生産効率が低下しています。
今後の見通しと政策的課題
今後の価格動向
現状のインフレ傾向やエネルギー事情を踏まえると、えのきだけの価格は中長期的にも上昇基調が続く可能性があります。ただし、供給体制が整備され、スマート農業の導入や生産効率の改善が進めば、価格上昇は一定程度で抑制できると見られています。
政策と支援の必要性
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生産支援:エネルギー効率の高い設備導入に対する補助金などが求められています。
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流通の効率化:近隣の都市部とのコールドチェーン整備で流通コストを下げる取り組みが急務です。
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価格安定対策:消費者支援のために、一定の価格上限を維持できる仕組み作りが必要とされています。
まとめ
えのきだけはこれまで“安価な日常野菜”として親しまれてきましたが、今や多くの地域で大きな価格上昇が起きています。地域差も顕著で、流通・エネルギー・気候・人材という多方面の課題が価格形成に影響を与えています。持続可能な価格と供給を実現するには、技術革新と政策的支援、そして消費者の理解が重要になるでしょう。
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