2010年以降、あじの小売価格は全国的に上昇傾向にあり、2025年4月には平均138.3円に達した。地域差が顕著で、和歌山や金沢では200円超を記録する一方、西宮や長崎では100円前後にとどまる。価格変動には漁獲量の減少、物流費高騰、地域流通の偏在などが影響しており、今後も価格は不安定な推移が予想される。持続可能な漁業と消費行動の見直しが求められている。
小売物価統計
あじ小売りの高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 和歌山 | 金沢 | 高知 | 京都 | 津 | 宇部 | 松江 | 旭川 | 大津 | 熊本 |
最新値[円] | 138.3 | 218 | 203 | 189 | 187 | 179 | 179 | 178 | 178 | 176 | 175 |
前年同月比[%] | +17.7 | -3.111 | +50.37 | +38.97 | +40.6 | +44.35 | +26.95 | +28.99 | +3.488 | -6.878 | +8.696 |
あじ小売りの安い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 西宮 | 福山 | 長崎 | 所沢 | 柏 | 佐賀 | 神戸 | 奈良 | 姫路 | 札幌 |
最新値[円] | 138.3 | 92 | 94 | 100 | 102 | 102 | 103 | 104 | 106 | 106 | 106 |
前年同月比[%] | +17.7 | +21.05 | +13.25 | -25.93 | +7.368 | +11.96 | -0.952 | -24.82 | +8.163 | -13.82 |
あじの推移


詳細なデータとグラフ
あじの現状と今後
2010年から2025年4月にかけて、日本のあじ(100g)の平均小売価格は緩やかな上昇傾向を示してきました。特に2020年以降、物流費の上昇や原油高、漁業資源の減少が影響し、価格の上昇幅が拡大。2025年4月時点の全国平均は138.3円で、前年比でも+17.7%と大幅な上昇を記録しています。
背景には、気候変動に伴う水温上昇や海流の変化により、あじの漁獲可能海域が移動しており、安定した水揚げが難しくなっている点が挙げられます。また、近年は若年層の魚離れが進む1方、健康志向の中高年層による需要が底堅く、供給に対して需給バランスが逼迫している状況です。
地域別価格の格差とその要因
2025年4月のデータでは、あじの100g単価が最も高いのは和歌山(218円)、金沢(203円)、高知(189円)などであり、日本海側・瀬戸内・紀伊半島に集中しています。これらの地域では高品質な地元産あじが出回りやすく、価格に上乗せされているケースが多く見られます。
1方、最安値は西宮(92円)、福山(94円)、長崎(100円)など。西日本を中心に比較的安価で購入できる地域があり、これは冷凍輸入品や養殖魚の流通、あるいは地元での大規模な水揚げに支えられていることが要因です。
前年同月比では、金沢(+50.37%)、京都(+40.6%)、高知(+38.97%)といった都市での急騰が目立ち、単なる物価上昇を超えた構造的な価格変化が進行中であることが読み取れます。対照的に、長崎(-25.93%)、札幌(-13.82%)、奈良(-24.82%)などは価格下落傾向にあり、価格の2極化が進んでいます。
価格変動の背後にある課題
価格変動の背景には、以下のような構造的課題が存在します:
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漁獲量の不安定化:あじの資源量は年ごとに大きく変動しており、漁業関係者の間でも不確実性が高いとされています。特に太平洋側と日本海側での漁獲高の差が価格に反映されています。
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物流コストの上昇:燃料費や人件費の増加により、産地から都市部への輸送コストが高騰しています。これが都市部価格に直接転嫁される形となり、消費者負担が増しています。
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流通網の偏在:冷凍・加工インフラの充実度や卸売市場の規模により、同じ魚でも地域によって価格差が生じやすい構造があります。
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消費地での嗜好の違い:関西や9州の1部では新鮮な地物の生食需要が高く、価格が高止まりしやすい傾向があります。
今後の価格動向と期待される対策
今後の価格については、以下のような見通しが立てられます:
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短期的には価格は高止まりまたは上昇基調:漁獲高の回復兆候が乏しく、燃料費や円安の影響を受けて、少なくとも2025年内は高値圏が続くと予想されます。
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中長期的には安定化の可能性も:養殖技術の向上や、水産資源管理の国際協調が進めば、供給量が安定し、価格の乱高下が和らぐ可能性があります。また、AIによる漁場の予測技術などの導入も1部で始まっており、今後の資源管理に期待がかかります。
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消費者側の行動変容:旬の時期に消費を集中させる、冷凍保存を活用するなど、価格変動に対応する生活者の知恵も必要です。
まとめ
あじの小売価格はこの15年間で緩やかな上昇を続け、2025年現在は平均138.3円となっています。地域ごとの価格格差は、漁獲状況、物流体制、消費文化など複数の要因によって生じており、単なる物価の問題ではありません。今後は持続可能な水産資源の管理と、価格変動を緩和する流通・消費戦略が問われる時代となるでしょう。
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