家計調査による「他の借金返済」の全国平均は2125円である一方、都市別には浜松市が突出して35,360円と高額で、他にも津市や和歌山市、福岡市などで大幅増加が確認されています。一方で、大津市や富山市などでは極端に低い数値が続き、全体として都市ごとに大きな差が生まれています。この傾向には、地域経済や雇用、世代別傾向が影響しており、将来的には金利や物価動向、世帯構成の変化によりさらなる地域間格差が進む可能性があります。
他の借金返済の家計調査結果
他の借金返済の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 浜松市 | 高知市 | 広島市 | 津市 | 和歌山市 | 福岡市 | 千葉市 | 大分市 | 新潟市 | さいたま市 |
最新値[円] | 2125 | 35360 | 4792 | 4598 | 4200 | 4126 | 3804 | 3061 | 3060 | 2956 | 2715 |
前年月同比[%] | +16.76 | +2920 | -7.024 | +162.3 | +295.1 | +906.3 | +339.3 | +280.7 | -11.59 | +130.9 | +289 |
他の借金返済の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 京都市 | 堺市 | 相模原市 | 神戸市 | 長野市 | 鳥取市 | 大津市 | 富山市 | 仙台市 | 福井市 |
最新値[円] | 2125 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 55 | 198 | 233 | 236 |
前年月同比[%] | +16.76 | -100 | -100 | -100 | -100 | -100 | -100 | -88.78 | -91.33 | -84.22 | -89.21 |
これまでの他の借金返済の推移


詳細なデータとグラフ
他の借金返済の現状と今後
家計調査における「他の借金返済」は、住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどの定型的な借入返済とは異なり、主に消費者金融、個人間の借金、短期借入などに対する返済を指します。これには、突発的な支出に対応するための一時的な借入の返済や、リボ払い・分割払いの残高も含まれる場合があります。
この項目は、家計の流動性の乏しさや生活防衛のための借入慣行を示す指標でもあり、生活の逼迫度を知るうえで注目されます。
最新データに見る都市間の格差
2025年3月時点での全国平均は2,125円ですが、都市によって極端な差が見られます。
高額な都市(他の借金返済額)
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浜松市:35,360円(+2920%)
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高知市:4,792円(-7.02%)
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広島市:4,598円(+162.3%)
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津市:4,200円(+295.1%)
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和歌山市:4,126円(+906.3%)
浜松市の異常な増加は、特殊要因(例:地元経済の変調、大規模リストラ、自然災害後の資金需要など)が影響している可能性もあります。
低額な都市
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大津市:55円(-88.78%)
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富山市:198円(-91.33%)
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仙台市:233円(-84.22%)
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福井市:236円(-89.21%)
これらの都市では、金融的な自立度が高いか、または借入・返済に対する回避傾向が強いと考えられます。
動向から読み解く背景
急増する都市の背景
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急な物価高や生活費の増加により、家計の一部が短期的な資金調達に頼らざるを得なくなっている。
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特定地域では、非正規雇用の増加や所得の不安定化が進み、月々のキャッシュフローに穴が開きやすい構造になっている。
急減する都市の背景
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キャッシュレス決済の浸透や家計管理アプリなどの普及により、返済に至る前に支出管理がなされている。
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地域によっては、共助や家族支援による資金補填が盛んで、借金に依存しない文化が根づいている可能性がある。
世代別の傾向
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若年層(20〜40代):結婚・出産・転職・住宅取得などライフイベントが集中し、資金不足を借入で補う傾向が強い。特に返済が「他の借金返済」として現れやすい。
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中高年層(50代以降):借金に対して慎重で、ローン返済を早期に終了させたい意識が強い一方、退職後の急な支出(医療費など)で一時的な借金返済が発生する場合も。
「他の借金返済」に潜む社会的課題
① 不可視化された家計危機
「他の借金返済」が表に出てきたということは、家計が追い詰められているサインでもあります。住宅ローンや教育ローンではなく、突発的に生じた“埋めるべき穴”に対処するための借入が多いことを意味します。
② 金利負担と多重債務化のリスク
消費者金融やリボ払いは高金利商品であり、毎月の返済負担が家計を圧迫しやすい構造です。金額が少なくても継続すると、慢性的な債務状態に陥るリスクを持ちます。
今後の推移予測
短期的見通し(〜2026年)
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原材料費の高騰や社会保障負担の増加が、可処分所得をさらに圧迫。
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雇用が安定しない若年層を中心に「他の借金返済」が増加傾向を維持すると考えられます。
中長期的見通し(〜2030年)
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金利が上昇すれば、借入コストが増し、借金自体の抑制に向かう可能性も。
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一方で、単身高齢世帯の増加や生活困窮者の増加により、「他の借金返済」が再び社会問題化する可能性もあります。
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金融リテラシー教育の効果が定着すれば、将来的には安定化・減少する見込みもある。
まとめ:データに隠された「生活防衛」のリアル
「他の借金返済」という項目は、生活の“最後の手段”としての資金繰りが可視化されたものです。都市間や世代間に大きな差がありながらも、その根底には共通して「生活の防衛」があります。このデータを正しく読み解くことは、支援政策や金融教育の方向性を考える上でも非常に重要です。
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