2010年から2025年までのデータをもとに、日本の都市別家賃を分析。東京都区部は全国平均の2倍以上と突出し、浦安や川崎なども高水準。一方、地方都市では家賃が平均を大きく下回る地域も多い。背景には人口動態や経済力の格差があり、今後はテレワーク普及や地方創生政策が家賃動向に影響を与える可能性がある。
小売物価統計
1カ月1坪当りの家賃の高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 東京都区部 | 浦安 | 川崎 | 横浜 | 府中 | 西宮 | 立川 | 大阪 | 京都 | 八王子 |
最新値[万円] | 0.451 | 0.96 | 0.734 | 0.732 | 0.678 | 0.675 | 0.651 | 0.636 | 0.617 | 0.592 | 0.584 |
平均比[%] | 100 | 213 | 162.8 | 162.4 | 150.4 | 149.7 | 144.3 | 141 | 137 | 131.3 | 129.5 |
前月比[%] | 0.063 | -2.269 | -0.0817 | 0.467 | -0.0148 | -0.399 | 0 | 0.126 | 0.179 | -0.0676 | 0.378 |
1カ月1坪当りの家賃の低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 八戸 | 今治 | 函館 | 佐賀 | 豊橋 | 松阪 | 旭川 | 和歌山 | 福山 | 郡山 |
最新値[万円] | 0.451 | 0.291 | 0.326 | 0.328 | 0.342 | 0.343 | 0.344 | 0.344 | 0.346 | 0.351 | 0.355 |
平均比[%] | 100 | 64.52 | 72.21 | 72.7 | 75.81 | 76.07 | 76.23 | 76.36 | 76.72 | 77.8 | 78.69 |
前月比[%] | 0.063 | 0.0344 | -0.0921 | 0 | 0.559 | -0.262 | 0.556 | -0.261 | 0 | -0.623 | -0.113 |
ランキング家賃の推移


詳細なデータとグラフ
ランキングの家賃現状と今後
家賃の水準は、その都市の経済力、人口密度、利便性、都市計画の影響を色濃く反映します。本稿では、2010年1月から2025年3月までのデータをもとに、1坪あたりの月額家賃に着目し、ランキング形式で都市別の傾向を分析します。家賃の全国平均は0.451万円で、都市によって大きなばらつきが見られます。
家賃の高い都市の傾向――東京圏と関西圏の強さ
2-1 東京都区部の圧倒的な高さ
東京都区部の家賃は0.96万円で、全国平均の213%と非常に高い水準です。これは長年の人口集中、オフィス街と住宅地の混在、再開発による物件の高級化などが原因です。
2-2 浦安・川崎・横浜など東京周辺都市の高水準
浦安(162.8%)、川崎(162.4%)、横浜(150.4%)といった東京近郊都市も高家賃の上位に名を連ねています。これらは都心への通勤が便利でありながら、生活環境の良さでも人気が高く、需要過多の状態が続いています。
2-3 府中・西宮・立川など郊外都市の健闘
府中(149.7%)、立川(141%)は東京のベッドタウンとして、また西宮(144.3%)は阪神間の高級住宅地として、それぞれ安定した住宅需要に支えられています。
家賃の低い都市の実態――地域経済と人口動態の反映
3-1 北日本・四国の都市に見られる低水準
八戸(64.52%)、今治(72.21%)、函館(72.7%)など、家賃が全国平均を大きく下回る地域では、人口減少と産業構造の停滞が共通の課題です。
3-2 地方中核都市の苦戦
福山(77.8%)や郡山(78.69%)など地方中核都市でも、思うように家賃が上昇していない状況です。これは、都市機能の集約や再開発の遅れ、若年層の流出といった問題に起因します。
課題――都市間格差の拡大と住宅政策の遅れ
4-1 地価と家賃の乖離
都市部では地価の上昇に伴って家賃も上がる一方で、地方では地価も家賃も下がり続けています。これは不動産投資や賃貸市場の偏在化を招き、経済的な格差を一層深めています。
4-2 若年層・低所得層への影響
東京などの高家賃地域では、若年層や単身世帯が住みにくくなっており、地方では人口流出による空き家の増加が問題となっています。住宅の質・価格・アクセスのバランスをとる政策が求められています。
今後の見通し――家賃の安定と地域活性化への期待
5-1 テレワークの定着による郊外・地方への再注目
コロナ禍を契機に進んだテレワークの普及は、通勤利便性以外の価値に着目する動きを生み出しました。これにより、今後は地方や郊外都市の家賃がじわじわと見直される可能性があります。
5-2 地方創生とコンパクトシティ戦略の成否
政府の進める「地方創生」や「コンパクトシティ」戦略が機能すれば、地方都市でも住宅需要が戻り、家賃の持続的な上昇が見込まれます。ただし、インフラ投資や雇用創出など、複合的な施策の成功が不可欠です。
5-3 外国人居住者の増加による変化
観光だけでなく、就労や永住を目的とする外国人の増加により、一部の都市では賃貸需要が底上げされることも想定されます。これも今後の家賃推移に影響を与える要因です。
おわりに――持続可能な住宅市場に向けて
家賃の格差は単なる市場現象ではなく、都市の在り方そのものを映す鏡です。高家賃地域の供給対策と、低家賃地域の魅力向上策は、同時並行で進めるべき課題です。国と自治体、民間が連携し、多様なライフスタイルに対応する住宅市場の実現が求められています。
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