日本のキャベツ1kg小売価格は2010年以降緩やかに上昇し、2025年4月時点で平均274.8円。産地や都市部で価格差が顕著で、物流や気候、人手不足が影響している。今後はスマート農業や地域流通強化により、価格の安定化が期待されるが、気候変動や農業構造問題が課題。
小売物価統計
キャベツ小売りの高い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 札幌 | 和歌山 | 府中 | 山口 | 新潟 | 西宮 | 藤沢 | 枚方 | 北九州 | 神戸 |
最新値[円] | 274.8 | 412 | 376 | 354 | 352 | 336 | 328 | 326 | 326 | 326 | 322 |
前年同月比[%] | +5.159 | -0.242 | +47.45 | +16.83 | +2.029 | +19.15 | +22.85 | +6.189 | +23.95 | +9.153 |
キャベツ小売りの安い都市
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 豊橋 | 長野 | 静岡 | 津 | 八戸 | 岐阜 | 浜松 | 福山 | 那覇 | 柏 |
最新値[円] | 274.8 | 188 | 202 | 207 | 208 | 215 | 216 | 219 | 222 | 222 | 223 |
前年同月比[%] | +5.159 | -5.164 | -4.608 | -5.882 | -30.65 | +2.857 | +1.389 | +8.824 | -2.632 |
キャベツの推移


詳細なデータとグラフ
キャベツの現状と今後
キャベツは日本人にとって身近な葉物野菜であり、食卓に欠かせない存在です。日々の価格は家計を直撃するだけでなく、農業生産、物流、地域経済、気象変動といった幅広い分野と密接に関わっています。本稿では、2010年から2025年4月までのキャベツ1kgあたりの小売価格の動向、地域差の分析、そして今後の価格変動に対する期待と課題を、丁寧に読み解いていきます。
全国平均の長期的推移と背景要因
2010年以降、キャベツの平均小売価格はゆるやかに上昇してきました。2025年4月の全国平均は274.8円で、前年同月比では+5.159%の上昇。背景には以下のような要因があります:
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気候変動:極端な天候(猛暑、長雨、台風など)が生産量を左右
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高齢化による農業就業者の減少:供給能力の制限
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肥料・燃料・資材の価格高騰:ウクライナ危機以降、輸入資源価格の上昇
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物流コストの上昇:特に軽量ではない葉物野菜には大きな影響
これらの要因は、年ごとの価格変動に強い影響を与えており、消費者にとっては「野菜の値段は読めない」という実感が広がっています。
地域別価格差とその要因
高価格地域(例:札幌・和歌山・府中)
最も高かったのは札幌で412円。これは輸送距離、気候(北海道では露地栽培が限られる)、冬季の保管コストなどが関係しています。和歌山(376円、+47.45%)や府中(354円、+16.83%)など本州内陸や都市周辺部でも価格が高くなる傾向があります。共通するのは、地場生産が少ないか、都市圏需要が集中している地域です。
低価格地域(例:豊橋・長野・静岡)
対して豊橋(188円)、長野(202円)、静岡(207円)などは、キャベツの主産地に近く、地場供給が可能であることが価格を押し下げています。特に8戸(215円)は前年比-30.65%と大幅下落しており、豊作や出荷集中があった可能性があります。
これらのデータから、地産地消が成立する地域ほど価格は安定・低価格になる傾向が見て取れます。
キャベツ価格の変動要因
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天候と作柄の影響 キャベツは露地栽培が多く、気象条件に左右されやすい作物です。収穫期の異常気象や災害は価格急騰を招きます。
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人手不足と高齢化 農業人口の減少により、生産者が減っていることは供給減と価格上昇の1因です。
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流通・物流の効率性 卸売市場から小売店に至るまでの流通段階でかかるコストは、地域によって大きな差があります。都市部への供給はその分高コストになります。
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政策的な影響 農政の補助金制度の変化や、産地振興策も作付けに影響を与えています。
今後の価格展望と期待
短期的見通し
今後半年から1年程度で考えると、価格は引き続き高止まりまたは緩やかな上昇傾向が予想されます。燃料費や円安の影響が残り、物流費も依然として高いためです。ただし、天候次第では局所的な値下がりもあり得ます。
中長期的見通し
長期的には以下のような要素がカギになります:
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スマート農業の普及 AIやIoTによる自動化技術が進めば、省力化と生産安定化が可能となり、価格安定が期待されます。
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地場産直の拡大 直売所や生協などの流通ルートが強化されれば、物流コストを抑えた価格維持ができる可能性があります。
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食習慣の変化 キャベツを使った健康志向の料理や加工食品の需要が高まれば、需給バランスに変化が生じます。
反面、気候変動や耕作放棄地の拡大など、構造的な問題が解決されなければ、将来的にキャベツは「安価な野菜」から「やや高級な野菜」へと変化するリスクもあります。
まとめ
キャベツ1kgの価格は、地域差、気候、流通、農業構造など複数の要因により動いており、決して単純な市場原理だけでは測れない複雑さを持っています。今後は、技術革新と地域の自立的流通の発展がカギとなり、適正価格と安定供給を実現できるかが問われるでしょう。
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