2022年から2025年にかけて日本のりんご1kgの小売価格は全国平均859.2円まで上昇し、都市ごとに価格と増加率に大きな差が見られました。高価格帯都市は立川や西宮など都市圏が中心で、品質志向や物流コストが影響。一方、盛岡や秋田など安価な地域でも増加率は90%近くに達しています。背景には農業資材高騰、労働力不足、異常気象、物流制約などの要因が重なっており、今後も価格の高止まりが予想されます。
食料品の都市別小売価格
りんごの高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 立川 | 西宮 | 松阪 | 伊丹 | 札幌 | 府中 | 松山 | 郡山 | 宮崎 | 富山 |
最新値[円] | 859.2 | 1062 | 1007 | 1005 | 983 | 971 | 969 | 968 | 958 | 958 | 954 |
平均比[%] | 100 | 123.6 | 117.2 | 117 | 114.4 | 113 | 112.8 | 112.7 | 111.5 | 111.5 | 111 |
前年月同比[%] | 16.48 | 24.5 | 22.06 | 22.56 | 31.59 | 13.17 | 39.42 | 30.99 | 22.66 | 28.25 | 37.07 |
りんごの低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 盛岡 | 水戸 | 長野 | 松江 | 柏 | 新潟 | 宇都宮 | 川口 | 秋田 | 津 |
最新値[円] | 859.2 | 656 | 682 | 708 | 728 | 733 | 751 | 764 | 764 | 781 | 783 |
平均比[%] | 100 | 76.35 | 79.38 | 82.4 | 84.73 | 85.31 | 87.41 | 88.92 | 88.92 | 90.9 | 91.13 |
前年月同比[%] | 16.48 | 10.81 | 24.68 | 11.5 | 15.01 | 0 | 1.624 | 3.946 | 10.72 | 15.36 | 19.91 |
これまでの果物の推移


詳細なデータとグラフ
りんごの現状と今後
2025年3月時点での日本全国のりんご1kgあたりの小売価格の平均は859.2円となっており、前年よりも明確に上昇しています。これは、食品全般にわたる物価上昇トレンドの中でも、特に「果物」の価格が顕著に上がっている例の一つといえます。
この平均価格を基にして、高価格帯・低価格帯の都市を見ると、日本国内でも地域差が大きいことが分かります。
高価格帯都市におけるりんご価格の特徴と背景
高価格上位10都市(2025年3月時点):
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立川:1,062円(+24.5%)
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西宮:1,007円(+22.06%)
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松阪:1,005円(+22.56%)
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伊丹:983円(+31.59%)
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札幌:971円(+13.17%)
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府中:969円(+39.42%)
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松山:968円(+30.99%)
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郡山:958円(+22.66%)
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宮崎:958円(+28.25%)
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富山:954円(+37.07%)
特徴と要因:
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都市部の購買力:立川や府中、西宮、伊丹などの都市は大都市圏に隣接しており、購買力の高い消費者が多いため、高品質な果物に対する需要が強い。
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品質志向と小売競争の少なさ:百貨店や高級スーパーの割合が高く、価格よりも品質重視の傾向が強いため、結果として価格が上昇。
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物流コストの増大:都市圏であるがゆえに流通にかかる人件費やエネルギーコストの増加が転嫁されやすい。
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生産地との距離:北海道の札幌などは物流の制約が大きく、青森などの主要産地からの輸送コストが上乗せされる。
低価格帯都市の価格動向と異常な増加率
低価格上位10都市(安い順):
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盛岡:656円(+76.35%)
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水戸:682円(+79.38%)
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長野:708円(+82.4%)
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松江:728円(+84.73%)
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柏:733円(+85.31%)
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新潟:751円(+87.41%)
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宇都宮:764円(+88.92%)
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川口:764円(+88.92%)
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秋田:781円(+90.9%)
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津:783円(+91.13%)
驚くべき点:
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価格は安いが、前年同期比の上昇率は非常に高い:全ての都市で+75%以上、最大で91%以上の上昇が見られています。
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元々が安かった地域:盛岡、秋田、松江などは地元での生産・流通があり、従来は安価にりんごを入手できていたが、そのバッファが限界を迎えた。
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異常気象や生産コストの上昇が特に影響した地域:寒冷地では気候変動による収穫量の減少が価格に直結。
価格上昇の背景 ― 農業・物流・気候のトリプルインパクト
① 生産コストの上昇
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肥料、農薬、農業機械の価格高騰:2022年以降、円安と国際価格上昇が直撃。
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人手不足と人件費の上昇:特に地方農村部では収穫作業の担い手不足が深刻。
② 異常気象の影響
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2023年・2024年は、猛暑・干ばつ・遅霜などでりんごの品質・収穫量ともに大幅に変動。
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気象災害が特定地域(例:青森県、長野県)で集中することで、全国的な価格に波及。
③ 物流とエネルギーコスト
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運送業界の「2024年問題」(働き方改革による人員・運転時間制限)による流通コストの増加。
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燃料代や配送効率の悪化が、地方での価格上昇に拍車。
都市別に見た消費者の選択と市場の個性
都市名 | 傾向 |
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立川・府中 | 都市型の高級志向、東京圏の高所得層がターゲット |
西宮・伊丹 | 阪神間の住宅地で、品質重視の家庭層多し |
松阪・松山 | 地方都市だが、観光需要やギフト需要あり |
盛岡・秋田 | 元々地産地消で安かったが、今や価格上昇率全国トップ |
長野・新潟 | 生産地であるにもかかわらず、輸送や労働力不足の影響が価格に反映 |
今後の展望 ― りんごの価格はどうなるか?
今後数年間、りんご価格は次のような方向性が想定されます。
① 高止まり傾向が続く
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コスト構造が元に戻る見込みが薄く、りんごに限らず果物全体が「贅沢品化」していく可能性。
② 安定供給に向けた技術導入がカギ
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スマート農業やドローン収穫、AI選果機の普及が、労働力不足の解決と品質安定化に貢献。
③ 消費者の購買行動も変化
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家庭向けの中玉・小玉パッケージへのシフトや、加工用りんご(カットフルーツ、ジュース)の人気上昇が進む。
まとめ:りんごは「庶民の果物」から「気候と経済に左右される嗜好品」へ
2022年以降のりんご価格の上昇は、日本の食品価格の中でも注目すべき現象です。特に2024年以降は、地域差の拡大・価格変動の激化・消費構造の変化という3つの側面が同時に進んでおり、今後の果物市場を見通すうえでの重要な指標となっています。
気候変動・人手不足・円安といった複合的な課題にどう対処していくか――それが「日本のりんご」の未来を左右する最大の鍵となるでしょう。
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